職業(その46) 

今日は久しぶりに朝からよく晴れて、
暑かったです。
ものすごく暑かったです。
どのくらい暑かったかというと、
シートベルトが焼き印になるくらい暑かったです。
いや、それは言い過ぎました。
でもやけどするくらいは熱かったです。

さて、今日は土曜ですので土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『バルーンアーティスト』です。

へー、 そんな職業もやるんだ、と思われましたか。
はい、なんか面白そうな仕事は片っぱしからやらせます。
ではいってみましょー。


いぬじがバルーンアーティストとして活動し始めて3か月。
最初は作っている途中で割ってしまったり、それを演出だとごまかしたりした(つもりで本気で割ったことはばれていた)こともしょっちゅうでしたが、今ではほとんど失敗なくスイスイ作れるようになってきました。
得意なのは、やっぱりプードルです。
一度スタンダードプードルサイズに挑戦してみたのですが、空気入れに時間がかかり過ぎてお客さんが帰ってしまったので諦めました。

さて、今日の仕事場は住宅展示場です。
家族連れのお客さんの前でバルーンアートを作り、お子さんにプレゼントするという仕事です。
いぬじは家型のバルーンアートを作れるよう事前にしっかり練習し、三角屋根の可愛らしいお家が1分くらいで作れるようになっていました。
さて、10時になりいよいよ仕事開始です。
週末ということもあり、オープン時間から次々と駐車場に車が入ってきます。
この展示場はいぬじの雇い主であるハウスメーカーだけでなく、合計8社のモデルルームが建つ総合展示場です。他の会社のモデルルームを見に来たお客さんも、いぬじが風船をふくらませ始めると足を止めて見て行ってくれます。
そのうち、小さい子ども連れの家族が3組、4組と順番待ちを始め、いぬじは大忙しになりました。
何を作ってほしいか希望を聞いてから作るのですが、やっぱり男の子は剣や飛行機、女の子にはお花や傘が人気で、プードルもちょこちょこ頼まれていぬじはますます張り切りました。
ちなみに三角屋根の家は6時間働いて3回しか作りませんでした。

さて、話は午後2時頃のことです。
3才くらいの女の子が走ってやって来て、いぬじにこう言いました。
「いくら」
いぬじは一瞬驚きましたが、すぐ気を取り直して、
「おかねはいらないです」
と答えました。しかし、女の子はまた、
「いくら」
と言いました。
「ただです」
いぬじはやさしく答えました。が、
「いくらほしい」
と言うのです。
いぬじは今度は思わず「えっ」と声が出てしまいましたが、なんとか気を取り直して、
「ぜんぜんいらないです」
と答えました。もちろんお給料はちゃんと住宅メーカーから出ます。
そこへ、息を切らしながら女の人が
「す、すみません、これ、さおり、こんなところにいたの」
と走ってきました。
「ハァハァ、本当にすみません、ちょっと目を離したすきにいなくなっちゃって、ハァハァ、パパー!いたー!」
どうやらパパは別の展示場を探していたようです。
「これ、もう、この子は、心配ばっかりかけて」
「…」
「いつも勝手にフラフラ歩いて行っちゃだめって言ってるでしょ」
「いたかー」
パパも走ってきました。
「ああよかった、本当にご迷惑をおかけしました」
「みつかってよかったです」
「はい、この子、いつもこうなんです」
「…」
「これ、ちゃんとパパにも謝りなさい」
「だって、いくら」
その時、ようやくいぬじはピンときました。そしてオレンジ色の風船をふくらまし始めました。
「本当にすみませんでした。ひとつ買わせていただきます、おいくらですか」
「おかねはいらないです」
「あ、そうなんですね、失礼しました」
「すぐできるのでまっててください」
いぬじは等間隔に風船を捻じっていきます。
「のりにのせますか、まきますか」
「うん!のせて!」
「「え?」」
両親は全く事態が飲み込めず、二人で顔を見合わせていると、
「できました」
といぬじが完成品を差し出しました。
「やったー、いくらだー!!」
それはまさしく、イクラの軍艦でした。
黒々とした海苔の軍艦に、つやつやしたいくらの粒が乗っている、巨大な軍艦寿司でした。
イクラの下に、ちょっとだけ白い風船のごはんも覗いています。さおりちゃんは大喜びです。
「あ、ありがとうございました…。この子、イクラが大好きで…」
「よかったです」
こうして、またひとついぬじのレパートリーが増えました。
家型より、人気が出ました。
めでたしめでたし。


私自身は、イクラは普通です。
軍艦で一番好きなのはネギトロです。
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職業(その45) 

今朝かなり強い雨が降ってきたので出掛けるのをやめようかと思ったのですが、
少しすると止んできたので予定通り出掛け(犬は留守番)、
着いた先で涼しかったので正解だったと喜び、
帰りは普通に暑くなりました。
夏ですね。

さて、連休で忘れがちになりますが、今日は土曜ですので土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『花屋さん』です。

エプロン姿の小さい犬がせっせと花を運ぶ姿を想像すると微笑ましいものがありますが、
さて、そこはいぬじですので、どうなりますやら。
それではいってみましょー。


いぬじが花屋さんで働き始めて半年。
初めのうちは花が入ったポットを蹴飛ばして倒したり、花の値段を間違えてレジに入力したり、小さな女の子におばあちゃんのお誕生日祝いの花をくださいと言われ花束に仏花を混ぜ掛けたり(これは店長が直前で気づいて事なきを得た)、色々と失敗もやらかしましたが、ようやく迷惑を掛けない程度に仕事ができるようになりました。

さて、先程来店されたのはスーツ姿の若い男性です。
冷蔵ショーケースの中のバラを見ながら、「やっぱり赤だよな…、いや、ピンク好きだし…、でも花嫁と言えば白だな…、お、青もきれいなんだな…」などとぶつぶつ呟いています。
「いらっしゃいませ」
独り言がやんだ瞬間を見計らって、いぬじがそっと声を掛けました。
「あ、えっ、い、犬??」
「はい、いらっしゃいませ、いぬじです」
「あ、ああ、そう、いぬじ君ですか」
「はい、いぬじです」
「あ、僕は大路です」
「おおじさんですか」
「おじさんじゃないよ、なんてね、アハハ」
「…」
「ご、ごめん、テンパってた」
「おもしろかったです」
「あ、ありがとう」
奥にいた店長が吹き出しそうなのをこらえました。
「きょうはどんなはなをおさがしですか」
「いや、あの、実は、か、彼女にプロポーズをしようと思って」
「おめでとうございます」
「い、いや、まだうまくいくとは限らないんだけどさ」
「だいじょうぶです」
「そう言ってもらえると心強いよ」
「ばらにされますか」
「あ、うん、やっぱりプロポーズと言えばバラかな」
「あかいろ99ほんはどうですか」
「99本?100本じゃなくて?」
「99ほんのばらはえいえんのあいといういみがあります」
「へえ~」
「108ぽんもいいです」
「へ?除夜の鐘的な?」
奥にいた店長が「バラで煩悩祓いませんがな」と心の中でツッコみました。
「108ぽんはけっこんしてくださいといういみがあります」
「へえ~そうなんだ、それもいいな」
「999ほんでもいいです」
「あ、いや、さすがにそれは多いな」
奥にいた店長が「そもそも店にそんなにあらへんがな」と心の中でツッコみました。
「ちなみに999本だとどんな意味があるの?」
「なんどうまれかわってもあなたをあいします、です」
「へえ~~」
「でも108本だとレストランまで隠しきれなさそうだな」
「50ぽんはどうですか」
「それも意味はあるの?」
「『えいえん、であいはぐうぜん』です」
「へえ、それ僕たちにぴったりかも」
奥にいた店長(36歳♀・独身)が「ふう~ん、偶然の出会いね~、月9的な~?」と心の中で羨みました。
「うーん、赤ばっかりじゃなくてもいいかなーとも思ってね」
「じゃあ10ぽんと10ぽんと10ぽんと10ぽんと10ぽんで50ぽんにしますか」
奥にいた店長が「なんべんぽんぽん言うねん」とツッコみました。
「えっ」
「あっ、すみません(汗)」
「てんちょうにつっこまれました」
「アハハ」
「本当に失礼しました」
店長はたまに心の声が口から漏れてしまいます。
「あかとぴんくとしろとあおとおれんじで50ぽんはどうですか」
「赤と白の花束には『結婚してください』という意味があるんですよ」
店長が横から説明を加えました。
「あ、そうなんですか、そりゃいいな」
「ピンクと青とオレンジにもそれぞれ愛情や信頼に関する花言葉がありますよ」
「じゃ、じゃあそれでお願いします」
いぬじは早速5色のバラを10本ずつ集めて店長に渡しました。いぬじはまだラッピングがうまくないので、上手な店長の出番です。
「リボンの色はどうされますか?」
「じゃあ、ピンクで」
「かしこまりました」
店長の熟練の技でとてもきれいな花束が完成しました。
「これなら彼女もきっと喜びます」
「プロポーズ、うまくいくといいですね」
「はい、頑張ります!」
大路さんは喜び勇んで店を出て行きました。
「いいなあ」
店長がぽつりとつぶやきました。
いぬじはすっかり開き切ったバラを一本手に取って、
「おかねはぼくのおきゅうりょうからひいてください」
と店長に渡しました。
店長は、
「いいよ、サービスしとく」
と言って、茎を短く切ったバラをレジ前のグラスに飾りました。
おわり。



後日、大路さんは婚約者を連れてまた花を買いに来ました。
(店長以外は)めでたしめでたし。
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職業(その44) 

今晩は飲み会です。
普段家では全くと言っていいほどお酒を飲みませんし、個人で仕事をしているので『職場の飲み会』というものもなく、まともにアルコールを口にするのは1年ぶり以上なのです。
最近よく飲んでいるのはカルピスマンゴーです。
炭酸水で割るとおいしいのです。

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『俳優』です。

なんといぬじが俳優に。
まあ、どんな役柄かはなんとなく想像がつくと思いますが、
とりあえずいってみましょー。


いぬじが俳優デビューして早3年。
これまで数々のドラマや映画に出演してきました。
ある時は散歩中に死体を発見する犬として、
またある時は主役陣の後ろをさりげなく通る散歩中の犬として、
はたまたある時は雨に濡れそぼっていたところをヒロインに傘を差してもらう捨てられた子犬として(但しヒロインはアパート住まいのため「私もひとりぼっちなんだ」と声をかけられるだけで拾われはせず、そのままCMに入ってその後どうなったかはうやむやのまま)、
とまあ、あちこちで『5秒間の犬』として活躍しています。
ちなみにセリフはまだ一度もありません。
喋ったところでアテレコだと思われてしまうためです。

そんないぬじに、ある日CMの仕事が舞い込みました。
有名メーカーから発売される、新商品のドッグフードのCMです。
残念ながらパッケージの写真になることはできませんでしたが、それでも初めてのCM仕事です。いぬじもいつも以上に張り切って現場入りしました。

スタジオに入ると、そこには、
真っ白な毛を美しく伸ばした大人しいマルチーズと、
スタッフに次々と芸を披露しているトイプードルと、
小さくて丸くて本物のぬいぐるみの様なポメラニアンがいました。
3匹とも、犬専門誌の表紙から飛び出してきたような可愛さと美しさです。

そこへしっぽを振っていぬじが近づくと、そばにいた一人が「ぷっ」と吹き出しました。
「おい、金村、あの犬見てみろよ」
その吹き出した、おそらく広告会社の社員と思われる若い男性が、隣りの同僚に声をかけました。
「何か、一匹だけ違うの混じってね?」
「確かにww なあ土橋、あれ、なんつー犬種だ?」
「柴犬、…じゃねーな」
「タヌキとの雑種じゃね?www」
「あ、それ一番しっくりくるわwww」
いぬじが人間の言葉がわからないと思って好き勝手なことを喋り続けます。
いぬじは犬達との挨拶に集中していたようで、ずっと変わらずしっぽを振り続けていました。

しかし、3匹の犬達は、会話の内容が全てわかっていたのです。
実は彼らも、いぬじと同じく人の言葉が喋れる犬達だったのです。
いぬじと違うのは、それをほとんどの人に隠していた、ということでした。

と、そこへドッグフードを作っている会社、つまりスポンサーのお偉いさんがやってきました。
もちろん、この現場で一番敬われる立場の人です。
「澤野さん、お早うございます!」
金村と土橋が45度のお辞儀をしながら真っ先に挨拶しました、
「ああ、君達か、今日はよろしく」
「「はい!」」
「あの、今日の撮影の段取りはですね」
と、土橋が澤野さんに話しかけると、
「ああ、いいよ、いつも通りだ、信用してるから」
「はい!ありがとうございm」
と90度のお辞儀をしかけた彼から澤野さんはスタスタと離れると、撮影をじっと待っている犬達のそばへやってきました。

「やあ、今日も頼んだよ」
「はい」「おっけー」「まかしてよ」
「…え、えと」
いぬじだけが澤野さんと初対面で、少し緊張してしまいました。
「君は初めてだね。お名前は?」
「ぼく、いぬじです」
「いぬじ君か。僕の想像通りだ」
「え?」
「僕はね、ほんとは雑種が一番好きなんだ。でも商品のパッケージに載るのはいつも純血種だろ?それが不満でね。今回のCMにはどうしても雑種に入ってほしかったんだよ」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ、君のような子が入ってくれて嬉しいよ」
「よかったね、いぬじくん」「さわのさん、やるじゃない」「きょうはきみがせんたーになれば?」
犬達にもやさしく声をかけてもらえて、いぬじはますますしっぽの速度が上がりました。
「でも、やっぱりぼくははしっこでいいです」
「おや、せっかくセンターに推してくれてるよ?」
「ぼく、まんなかだときんちょうしちゃうから」
「そうか、それなら今日も」
「わたしのでばんね」
トイプードルのミルルがクルッと回ってシュッとお座りをして、ニコっと笑いました。

その後、無事撮影も終わり、犬達のオーナーさんが迎えに来た時、
「ちょっとまって」
とミルルが澤野さんに走り寄ってそっと声を掛けました。
「ねえ、こうこくがいしゃのたんとう、かえてもらって」
「アハハ、やっぱり聞いていたんだね」
「わらいごとじゃないわよ、なんなのあのふたり」
「まあ、若いからね、適当にうまくやっとくよ」
「ほんと、おねがいよ」

数日後。
金村と土橋に辞令が出ました。
【下の者 映像制作会社ワンダフルムービーズに出向を命ずる】




本当は金土コンビの会話はいぬじにも聞こえていた、
かどうかはご想像にお任せします。
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職業(その43) 

昨日の真夜中の時点で、今日は昼から雨の予報だったのです。
しかし、
思いっきり午後から晴れでした。
せっかく洗濯しなかったのに。
太陽を返せ。
↑何か社会派の映画っぽいですね

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『農家』です。

首にタオル巻いてせっせと野菜を育てる姿が目に浮かぶようですが、果たしてどんな物語になりますやら。
それではいってみましょー。


いぬじが農業を始めて早2年。
一人ではさすがに無理ですので、ご近所の方にも手伝ってもらいながら、せっせと野菜を作り続けています。
ちなみに夏はきゅうり、冬は小松菜を育てています。
どちらも自分が好きな野菜です。小松菜の根の方のシャクシャクするところが特に好きです。

さて、只今夏真っ盛り、きゅうりの旬真っ盛りです。
毎日にょきにょき伸びてくるきゅうりを1本1本手で収穫し、段ボールに詰めて出荷します。
今年はなかなか出来が良く、味もいいと売れ行き好調です。
曲がってしまった物は直売所や道の駅などに安く置いてもらうとそちらも良く売れます。
傷が付いてしまった物は近所の本山さん(女性・58歳)にサラダや漬物にしてもらったところ、それもまた人気商品になりました。
さらに余った物は家に持って帰って晩ご飯になります。
犬の姉弟達は喜んでぼりぼり食べますが、かーちゃんはそろそろ飽きてきたとぼやいています。

ある日のこと。
いぬじが畑で作業をしていると、ロードバイクを押しながら一人の若い男性が近づいてきました。
大きなバックパックを背負っているところを見ると、どうやら自転車で一人旅をしているようです。
「こんにちはー」
「はいこんにちは」
いぬじが高く伸びたきゅうり畑の間からひょっこり顔を出したので、男性は思わず「わっ」と驚いてのけぞってしまいました。
「…え、今返事したの、…君?」
「はいぼくです」
「喋れるんだね…」
「はいしゃべれます」
「あの、ここの畑の持ち主の方はどこかな」
「ここです」
「いや、君、番犬なんだよね、あの、ご主人はどこかな」
「ぼくです」
「えっ」
「ぼくのはたけです」
「そ、そうなんだ、すごいね」
「ありがとうございます」
「あの、申し訳ないけど水をちょっともらえないかな」
「はいどうぞ」
いぬじは水やり用のホースを差し出しました。
「あ、いえ、飲み水だと、ありがたいんですが」
「はい」
いぬじは自分の水筒を差し出しました。
「ありがとう」
「これもどうぞ」
いぬじは手近にあった少し曲がったきゅうりを採って、男性に渡しました。
「いいんですか」
「はいどうぞ」
「じゃあ、いただきます(ポリポリ)…ん、うまい」
「ありがとうございます」
「(ポリポリポリ)いやー、ほんとにうまいな」
「あっちにおかしもあります」
「いや、そこまでしてもらっては」
「ぼくそろそろきゅうけいしようとおもってました」
「そうなんだ、じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「はいあまいおかしです」
こうして二人は畑の端にしゃがんでしばらくおしゃべりをしました。

男性は丸川君といい、大学の夏休みを利用して自転車で往復1000km走る旅をしているそうです。
旅を始めて1週間、観光もしながら300kmほど走ってきたとのこと。夜は許可を取ってテントを張り、銭湯や日帰り温泉、それもなければ公園の水で体を洗いながら旅をしてきました。
20分ほど話をしたところで、日が暮れる前に次の町まで行かなければならないと丸川君が立ち上がりました。
「本当にありがとう」
「どういたしまして」
「水もたっぷりもらったから、これで安心して行けるよ」
「あとこれももっていってください」
いぬじは、まだ小さく棘が残るきゅうりを5本、保冷剤の入った袋に入れて手渡しました。
「そのくらいがいちばんおいしいです」
「いいのかな、こんなにしてもらって」
「うるほどありますからだいじょうぶです」
「ハハハ、じゃあ遠慮なくいただきます」
「きをつけてください」
「うん」
「さよなら」
「ありがとう、それじゃ」
丸川君はロードバイクにまたがり、西に向かって旅立っていきました。
いぬじは畑に戻り、また作業を始めました。

丸川君が次の休憩所でいぬじにもらった袋を開けると、みずみずしく可愛らしいきゅうりと一緒に一枚のカードが入っていました。
カードには「♯きゅうり ♯じてんしゃ」と書いてありました。
丸川君がインスタグラムを開いてそのハッシュタグで検索すると、真っ直ぐなきゅうりと曲がったきゅうりが机の上に並べられて自転車の形になっていました。
丸川君は「いいね!」を連打しましたが、やっぱりおひとり様一回ぽっきりでした。
おわり。


ぽっきりです。
きゅうりだけに。
ちなみに我が家もきゅうり地獄が始まっております。
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職業(その42) 

今月初めに健康診断を受けたのです。
その結果が昨日返って来て、ちょっとドキドキしながら開けると、
コレステロール値が基準をオーバーしていました。
「あ、ヤバい、おやつ食べ過ぎたか」
と思いながらよく見ると、
HDL(いわゆる善玉)の方でした。
まあ多すぎるのも良くないようですが、そこまで多いわけではないので助かりました。

さて、今日は土曜ですので、土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『トリマー』です。

犬生十年、一度もトリマーさんにお世話になったことはないいぬじ、
自分がその立場になった時にはどんな働きぶりを見せるのか。
ではいってみましょー。


いぬじがトリマーとして働き始めて半年。
お店にはスタッフが3人いますが、いぬじは体が小さいので小型犬専門として働かせてもらっています。
それでも自分より大きい子もかなりいます。
「すみません、ちょっとじっとしててください」と低姿勢でお願いします。

今日いぬじが担当するのはトリミングが初めてのお客さんです。
まだ生後4か月のパピヨンで、名前はリリちゃんと言います。
リリちゃんがかなり緊張していたので、いぬじは優しく話しかけました。
「こんにちはリリちゃん、ぼくいぬじだよ」
「おにいちゃんもいぬなの」
「そうだよ、ぼくもいぬだよ」
「ほかのひとはいぬじゃないのにおにいちゃんはいぬなの」
「そうだよ、ぼくだけいぬだよ」
「でもいぬのおにいちゃんでよかったな」
「ありがとう、ぼくがんばるね」
「うん」
「それじゃ、さいしょにつめきりするね」
「あ、それ、まえにされたことある」
「かいぬしさんにやってもらったの」
「ううん、うまれたおうち」
「そうか、ぶりーだーさんにやってもらったんだね」
「うん」
「いたかった?」
「ううん、ぜんぜんいたくなかった」
「そっか、ぶりーだーさんはやっぱりじょうずだね」
「じょうずじゃないといたいの?」
「いたいこともあるけど、ぼくがんばるよ」
「うん、いたいのやだな」
「だいじょうぶ、つめがしろいから」
「しろいとだいじょうぶなの?」
「うん、くろいときりすぎちゃうことがあるけど、しろいとけっかんがみえるからきりすぎないよ」
「おにいちゃんのつめ、まっくろだね」
「うん、だからかーちゃんがたまにしっぱいしていたいの」
「じぶんできらないの」
「うん、じぶんじゃきれないの」
「かわいそう」
「でも、がまんしたらおやつもらえるの」
「いいな、わたしもおやつほしいな」
「わかった、あとであげるね」
「やったー」

そうして、いぬじは無事深爪させずに爪切りを終え、耳掃除、歯磨き、足回りやお尻回りの毛のカットをして、シャンプーを始めました。
「ちょっとじっとしててね」
「うん、がんばる」
「あつくない?」
「うん、ちょうどいい」
「かゆいとこない?」
「みみのうしろがちょっとかゆいな」
「じゃあしっかりこすっておくね」
「あー、そこそこ」
「しっぽのつけねもごしごしするね」
「うん、あーそこそこ」
犬同士なので、気持ちいいツボはよく知っています。シャンプーだけいぬじにお願いしたがるお客さんもいるほどです。
隣のテーブルでシャンプーを待っていたトイプードルの小太郎君も、「あのおにいちゃんにあらってほしい!」と言い出しました。
スタッフの長居さんは、「じゃあリリちゃんは私が乾かすから、いぬじは小太郎君も洗ってくれる?」と交代しました。
「あーずるい、わたしもいぬじくんがいい」
「ぼくもぼくも」
ケージの中で順番を待っていたチョコちゃんとテンテンくんもいぬじをご指名です。結局、いぬじはその日の小型犬のお客さん全員のシャンプーをしました。

閉店後。
いぬじは店長に呼ばれ、こう言われました。
「ねえ、いぬじはシャンプー好き?」
「あ、じつはぼくあんまりすきじゃないです」
「…そっか、じゃあ諦めるかな」
「なにをあきらめるんですか」
「あのね、いぬじのシャンプーがとっても人気だから、明日からいぬじは小型犬のシャンプー専門になってもらおうかと思ったの。でも苦手なら無理強いはできないね」
「あ、すきじゃないのはじぶんがしゃんぷーされることです」
「えっ、じゃあシャンプーすることは嫌いじゃないの」
「ううん、みんなよろこんでくれるからすきです」
「じゃあシャンプー専門でもいいの?」
「はい、ぼくやります」

翌日から、いぬじはシャンプー係になりました。
実はいぬじはハサミや鉗子を持つのがちょっと怖かったので、シャンプー専門になって本当に助かったのです。
お客さんにも「かゆいところに手が届く」と大人気で、他のスタッフも暴れる子をなだめすかして洗う必要がなくなり、売上も上がり、皆が幸せになりましたとさ。
めでたしめでたし。



実際いぬじはシャンプーが苦手です。
五豆は逃げようと必死です。
猫はこっちが傷だらけになります。
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