職業(その60) 

今日は久しぶりにそこそこ晴れた週末になりました。
午前中は非常に寒かったのですが、午後から気温が上がったので、3匹とも連れて駅前へ行ってきました(いぬは人の多い場所が好きなのです)。

駅は家から徒歩五分ですが、家のある方の出口は何もなく人もまばらです。
反対側は観光スポットに通じる出口なので、今日はそこそこ人も集まっているだろうと思って行ったら、
ツアー客でごった返していました。
あんなに駅と駅内の通路に人がいるのを見たのは生まれて初めてかもしれません(と言っても田舎なので都会とは比べるべくもありませんが)。
駅前でしばらく佇んでいると、数人の奥様方が声をかけてくださり、無事いぬも撫でてもらえました。

という本日は、恒例企画「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
記念すべき第60回目の今日は、
なんと、最終回です。
ほんとです。
今日の職業は『路線バスの運転士』です。

ワ行のお仕事がなかったので、「ろ」で終わりです。
さて、最後はどんな仕事ぶりを発揮するでしょうか。
それでははじまりはじまりー。


いぬじが路線バスの運転士になってもうすぐ2年。
昼間は各路線とも1時間に1~2本しか走らない街なので、『犬の運転手さん』はすっかり有名になりました。小さい子にも人気が出てきて、いぬじが運転するバスをわざわざ選んで乗ってくれる親子連れもいます。赤字ギリギリの会社ですが、通勤・通学の時間帯以外の乗客数も少しずつ増えてきました。
会社ではいぬじをキャラクター化し、ラッピングバスを走らせようかという話も出ましたが、
いぬじの色が地味なのでボツになりました。
犬かタヌキか分からないのもボツの理由でした。

そんなある日のことです。
いぬじは最終バスを運転していました。
時刻は夜10時を過ぎています。終点までのバス停はあと3つ。乗客は会社帰りらしき若い女性ひとりになりました。いぬじは通勤で使っているお客さんの顔は全員覚えていたつもりでしたが、彼女の顔は全く見覚えがありません。
いぬじの会社のバスは、後ろのドアから乗って前のドアから降りるようになっているので、運転士が乗客の顔をちゃんと見られるのは降車の時だけです。ミラー越しにちらちらと顔は見えましたが、やはり初めてのお客さんのようです。

いぬじは次のバス停のアナウンスを鳴らしました。
ポーン『次は、緑木中学校前 緑木中学校前です 市立図書館へお越しの方もこちらでお降りください』
降車ボタンは押されず、いぬじはそのままバス停を通過しました。

ポーン『次は、安登三丁目 安登三丁目です 車内事故防止のためバスが完全に停まってから席をお立ちください』
アナウンスが終わった時、ちょうど信号に引っかかりました。この信号は赤の時間が少々長く、1分は動き出せません。その時、女性の携帯の着信音が鳴りました。
「もしもし」「うん、今バスの中」「喋っても大丈夫だと思う、私しか乗ってないから」
いぬじは「いいですよ」と心の中で思いました。
「…様子、どう?」「そう、やっぱりまだ起き上がれないんだ」「今日病院行った?」
どうやら、家族の中に具合の悪い人がいるようです。ひょっとすると、普段はひとり暮らしをしていて、今日は実家へお見舞いに帰ってきたのかもしれないな、といぬじは思いました。
女性が降車ボタンを押さなかったので、いぬじはまたバス停を通過しました。

ポーン『次は 津木町 津木町です 島山歯科医院へお越しの方はこちらでお降りになると便利です』
女性の会話は続きます。
「うん、もうすぐ駅着くよ」「…え? どれくらいかかる? …うん、待てるけど、寒いからできるだけ早く来てね」
女性は終点まで乗るようです。駅まで家族が車で迎えに来るようですが、どうやらバスの到着から少し待たされることになってしまったようです。

ポーン『次は西州駅 西州駅 終点です このバスは車庫に入ります お忘れ物のないようご準備ください』
バスは駅のロータリーに入って停車しました。女性は立ち上がり、運転席に近づいてきました。
「ごじょうしゃありがとうございました」
いぬじがそう声を掛けた瞬間、女性はいぬじを見つめたままピクリとも動かなくなりました。
そして、ツーッと目から涙をこぼしたのです。
「おきゃくさま、どうされましたか」
「…あっ、す、すみません、あの、運転手さん、ワンちゃん、なんですね」
「はい、いぬのいぬじです」
「いぬじさんですか、あの、急に泣いたりしてごめんなさい」
「いえ、だいじょうぶですか」
「あ、はい、…実は、実家で飼ってる犬が病気になってしまって」
「それはしんぱいですね」
「今ひとり暮らししてて離れて住んでて、今日やっと会いに行けるんです」
「わんちゃん、よろこびますね」
「それで、あの、その子が子犬だった頃に運転手さんがよく似てるんです」
「そうでしたか、それはぜひおあいしたいです」
「私も是非会ってやってほしいです。…でも、元気にならないと、無理ですよね」
「きっとげんきになります」
「そう、だといいんですけど」
「おねえさんのおかおをみたらきっとげんきになります」
「そっかな、うん、運転手さんに言われたらなんかそんな気がしてきました」
「よかったら、これどうぞ」
いぬじはポケットからお守りを出しました。
「かーちゃんがくれたおまもりです、よくききます」
「えっ、でもこんな大事な物もらえません」
「それじゃ、わんちゃんがげんきになったらまたばすにのってかえしてください」
「はい!絶対返しに来ます!それじゃ、お言葉に甘えてその時までお借りします!」

その時、一台の車がロータリーに入ってきました。
「あっ、母が迎えに来ました」
「よかったです、ごじょうしゃありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
彼女の顔はすっかり笑顔になり、跳ねるようにバスを降りていきました。

それから2週間後。
いぬじはまた同じ路線の最終バスを運転し、終点の駅に到着しました。
すると、バス停に二人の女性が立っていて、若い方の女性が一匹の犬を連れていました。
ドアを開けると、「いぬじさん!」とあの元気な声が飛んできました。
「こんばんは、お守り返しに来ました!この子、元気になりました!」
いぬじはバスを降りて、お守りを受け取り、しっぽをブンブン振るタヌキ顔の雑種のジロちゃんを「なおってよかったね」となでました。

めでたしめでたし。



来週からどうするかは未定です。
とりあえずこの連続企画は終わりますが、
たまにいぬじに働かせたくなったらまた書くかもしれません。
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職業(その59) 

明日は今季一番の寒波に覆われるそうです。
私の住む地方も、昼間でも8℃くらいまでしか上がらないようです。
ずっとこたつ入っとこ。

さて、今日は土曜恒例企画、「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『レポーター』です。

ひらがなしか喋れないいぬじが、レポーターなど勤まるのか、
とお思いでしょうが、
まあ口に出せばひらがなも漢字交じりもわからないので大丈夫でしょう。

というわけで、はじまりはじまりー。


いぬじが地方局のレポーターとして働き始めて丸一年。
最初は緊張でとちったり段取りを間違えたり生放送のレポート中にすっ転んだり食べ物のレポートで美味し過ぎて一言もしゃべらず食べ続けたりと一通り失敗もしましたが、逆にそれが功を奏したのか、「なんか癒される」「自分の失敗がバカバカしくなる」「こんないぬじでも頑張って生きている」と観ていて励まされる視聴者が続出、レギュラー出演している夕方の帯情報番組もじわじわ視聴率を伸ばしています。
まさに怪我の功名、災い転じて福となす。
最近、出演コーナーのタイトルが『いぬじレポーターの結果オーライ』になりました。

さて、今日レポートするのは先日オープンした道の駅です。
地元で採れた新鮮な農産物、それを使ったお惣菜やパン、お土産コーナーやレストランまで備えた、道の駅の中でもかなり大規模な施設です。
オープン初日から大盛況で、本当は生放送でその模様を伝えたかったのですが、平日でもお客さんが多く邪魔になってしまうため、VTRを流すことになりました。

開店前の午前7時。9時開店で、8時には開店準備が始まるのであまり時間はありません。
いぬじはしっかりと台本を頭に入れ、建物が全てカメラに入る駐車場のポイントにスタンバイして、
いざ、撮影スタート。
「きょうは、せんじつおーぷんしたばかりのみちのえき、『ふれあいのさと とうげのすてーしょんにきています」
カメラが建物の方を大きく映します。
「ごらんください、ろぐはうすをいめーじしたとてもおしゃれなたてものです」
再びいぬじをメインに映し出し、
「ではさっそくなかにはいってみましょう」
と言いながら、正面入口をくぐります。
最初に紹介するのは新鮮野菜です。既に中央通路に朝採れたばかりの野菜が数種用意され、隣で青果担当の川崎豊子さん(56歳、趣味は大人のぬり絵)が緊張しながらスタンバイしています。
「こちらやさいうりばたんとうのかわさきさんです、おはようございます」
「おはようございます」
「きょうはあさはやくからありがとうございます。さっそくですがこちら、ごらんください、けさとれたばかりのおやさいです」
カメラが野菜にズームインします。
「めずらしいおやさいがありますね、こちらはなんというおやさいでしょう」
「はい、こちらから、ムカゴ、わさび菜、ヤマトイモです」
「このむかごは、やまいものたねになるそうですね」
「そうです、これを埋めておくとまた山芋ができます」
「ぼくはどれもたべたことがないやさいばかりです。どんなおりょうりがありますか?」
「ムカゴはムカゴ飯、わさび菜はサラダやおひたし、ヤマトイモは磯部揚げやすりおろしてとろろにするとおいしいですよ」
「きいているだけでよだれがでそうです。きょうはなんと、そのおりょうりをつくっていただきました」
「わさび菜のサラダとヤマトイモのとろろです」
「そして、このすいはんきをあけますと」
「炊き立てのムカゴ飯です」
「うわ~おいしそうですね~」
「はい、どうぞ」
川崎さんはホカホカのムカゴ飯をお茶碗によそっていぬじに渡しました。
「さっそくたきたてむかごめしをいただきまーす」
パクリ
「はふっ あつっ ふはっ あふっ」
「すいません、ちょっと熱かったですかね」
「ひへっ(いえっ) はいひょうふへふ(だいじょうぶです) ほひひひへふ(おいしいです) あふっ」
カメラを回していたディレクターが「止めようか」と声を掛けましたが、
「はいひょうふへふ ほひひひへふ ほははひほひいへふ(おかわりほしいです)」
「「えっ」」
川崎さんとディレクターが声をそろえて驚いたところへ、
「あ、へほ(でも)、もうひょっとふーふーしへからくだはい」
「あ、はいはい」
川崎さんは、ムカゴ飯をお茶碗によそってお箸にちょっと取ってフーフーしてからいぬじにあーんと食べさせました。いぬじは「あーん」と普通に口を出してパクリと食べました。その瞬間川崎さんがハッと気づきました。
「あっすいません、小さい孫がいるものでつい癖で」
「いえ、こんどはちょうどよかったです、おいしいです」

この模様はノーカットで放送されました。
おばちゃんにあーんと食べさせてもらっているいぬじの様子が微笑ましく、ムカゴの売り上げが前の週の倍になりました。
めでたしめでたし。


書いといてなんですが、
私はムカゴ飯を食べたことがないです。
食べてみたいです。
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職業(その58) 

最近、「よいお天気」という週末が少ないですね。
今日も朝から降ったりやんだり晴れたり曇ったりまた降ったりやんだりと一日中めんどくさくそして冬のように寒い一日でした。
雨がやんで少し晴れ間が見えた隙に犬の散歩に出たものの、開始10分弱でまた降り出してUターンしました。
また風邪ぶり返したらどうしてくれんねん。
とお天道様にツッコみたくなりました。

さて、今日は土曜恒例企画、「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『旅行会社の受付』です。

我が家はここしばらくまともに旅行してませんが、
はてさて、素敵な旅の窓口であるカウンター業務、
一体どのような顛末になりますやら。
それでははじまりはじまりー。


いぬじが旅行会社の受付スタッフとして働き始めて丸二年。
国内の日帰りバスツアーを多く企画しているアットホームな会社です。
一時は赤字が膨らみ危ない時期もありましたが、営業さんの努力の甲斐あって、高齢者の顧客獲得に成功し今では経営も安定しています。
いぬじは安定してから入ったので「あの頃は大変だった」と言われてもいまいちピンと来ていません。
お陰様で毎日楽しく働いています。

そんなある日、一組のお客さんが来店されました。
40代くらいの女性と、高齢のご夫婦の3人連れです。
「いらっしゃいませ」
いぬじは明るく挨拶しました。
「あら、ワンちゃん」
ご夫婦の奥さんの方がニコニコして声をかけてきました。
「はい、いぬじです」
「いぬじさんっていうのね、よろしくね」
「こちらこそよろしくおねがいします」
「昔うちにもいぬじさんみたいなワンちゃんがいてね」
「お母さん、本題」
「あらごめんなさい」
40代の女性は、高齢のご夫婦の娘さんのようです。
「すいません、母はいつもこうで」
「いえ、とてもすてきなおかあさまです」
「あ、ありがとうございます。あの、バスツアーの申し込みをしたいんですが」
女性はそう言って、手に持っていたパンフレットをカウンターの上に置きました。
「この、『〇△温泉 選べるカニしゃぶまたはすき焼きグルメツアー』というのなんですが」
「はい、ただいまとてもにんきがあるつあーです」
「そうでしたか、まだ間に合いますか?」
「さんめいさまですか」
「いえ、両親二人だけです」
「私がカニが好きで夫がすき焼き好きで、娘夫婦が旅行をプレゼントしてくれるというものですから」
「お母さん、いいよそんなこと言わなくて、いぬじさんすいません」
「いえ、とてもすてきなおはなしです」
「あ、ありがとうございます」
「ごきぼうのおひにちはおきまりですか」
「はい、12日か、15日か、17日でおねがいします」
「おしらべしましたら、15にちか17にちでしたらまだあいております」
「そうですか、よかった。じゃあ15日でお願いします。それでいいんだよね、お母さん」
「ええ、15日が一番いいわ」
「かしこまりました」

そうして手続きが進み、無事予約が完了しました。
「それではとうじつこちらのしょるいをおもちになってしゅうごうばしょのばすていまでおこしください」
「集合場所までは私が車で送るから、書類だけは自分で持っててね」
「わかったわ」
「てつづきはいじょうになりますが、さいごになにかごふめいなてんなどございませんか」
「お母さん、何かある?」
「うーん、特にないかしら」
「大丈夫でs」
と娘さんが言いかけたその時、
それまで一言も喋らなかったご主人が、初めて口を開きました。
「すき焼きは肉多めにはできませんかな」

残念ながらツアーのオプションとしては『肉多め』はなかったのですが、食事をする店に問い合わせたところ、元々有料の肉お代わりサービスがあるとのことで、ツアー客も注文できるようにしてくれました。
1か月後に店頭に並んだ新しいツアーのパンフレットには、
『〇△温泉 メニューとサイズがWで選べるカニしゃぶまたはすき焼きグルメツアー』の文字がありました。

めでたしめでたし。


どっちも捨てがたいですが、
どっちかというとカニ派(カニ多め)です。
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職業(その57) 

連休二日目ですね。
昨日は青空が広がる暖かい一日でしたが、今日は午前中から雨も降る肌寒い日になりました。
昼間の予定は相変わらずありませんでしたが、今日はこの後高校の友人の家で集まるのです。
おそらく20歳くらいを最後にずっと会っていなかった友達とも久しぶりに会えるので今から楽しみです。
アルコールも準備されていますが、
風邪が治らないので飲めません。
うつすといけないので長居もせずに帰ります。
風邪のバカ。

さて、今日は土曜ですので恒例企画、「いぬじが〇〇だったら」をやります。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『漁師』です。

大自然との闘いでもある漁師のお仕事。
さて、いぬじはどのような活躍(?)を見せるでしょうか。
でははじまりはじまりー。


いぬじが漁師になってもうすぐ1年。
最初は「体が小さいので使い物にならない」と船長の大平さんに突っぱねられましたが、いぬじはどうしても諦め切れず、出港前にこっそり船に忍び込むことを5回繰り返したところ、「そんなにやりたいなら勝手にしろ」と許してくれました。
どうしてそこまでいぬじが漁師になりたかったかと言えば、
船の上でしか食べられない漁師飯というのをどうしても食べてみたかったからです。
初めて食べさせてもらった時は感動で3回オカワリしました。

いぬじの仕事は沿岸漁業ですので、朝4時に出港して9時頃には帰港、その後魚の選別や出荷準備をし、お昼休憩のあと網や仕掛けの手入れをして14時頃には仕事が終わります。
朝は大変早いですが、そこは犬ですのであまり苦ではありません。家に帰ったらおやつとご飯の時間以外ぐっすり寝ているので、睡眠不足に悩まされることもないのです。
かーちゃんは最初の3日だけ早起きに付き合いましたが、さすがに3時半起床に耐えられず、それからはいぬじだけでそっと起きて出かけています。
しし豆が一緒になって起きてしまうので、結局かーちゃんは4時半にはにゃーにゃー起こされるのです。

そんなある日のこと。
天気は薄曇り、天気予報でも雨は降らず、風も強くないということでした。
大平船長はいつも通り船を出す準備をしていましたが、いぬじは船長に向かって「きょうはやめてください」と言いました。
「何言ってやがる、とっとと準備しな」
「だめです、きょうはいけません」
「はあ?天気も悪くねえし何が駄目だってんだ」
「きょうはかぜがふきます」
「全然波なんかないじゃねえか、なんだ、さぼりたいのか」
「ちがいます、でもあぶないです」
いぬじが必死で船長を止めようとしているのを見て、別の乗組員の森井さんが「どうしたいぬじ、風が吹くってどういう意味だ」と声をかけてきました。
「ぶわあってかぜがふくのです」
「突風でもあるっていうのか?」
「はい、すごいかぜです」
「そんなもん、今からわかるはずないだろ」
船長がそう言いかけたところ、
「…いや船長、こいつ犬ですからね、俺らには感じない何かを感じ取ってるのかもしれませんよ」「しかしこいつの勘だけで船出さんわけにはいかんだろ」
いぬじは船長と森井さんが喋っている間に、同じように出港準備をしている他の船の船長にも出港をやめるよう言いに走りました。
「こら、いぬじ、勝手な事すんじゃねえ」
船長が怒鳴るのも聞かず、いぬじはあちこちに言って回りました。
結局、いぬじが最後まで「だめです」と言い張る勢いに負け、「今日だけだからな」と船長は出港をやめました。他の船も、10隻中3隻だけはいぬじを信用して漁に出ずに帰りました。

午前6時。
突然南の方から竜巻が発生し、出港した7隻中3隻が次々と煽られて転覆。
幸い大平船長が海上保安庁に待機をお願いしておいたおかげで救出が早く、乗組員は全員無事でした。
それからというもの、大平船長だけでなく、他の船の船長も毎朝いぬじに今日は大丈夫かと聞きに来るようになりました。
いぬじは漁師飯を4回オカワリしてもいいことになりました。
めでたしめでたし。


では行ってまいります。
本当は理系クラスの集まりですが、
ホストの子が小学校からの同級生なので文系の私も混ぜてもらえました。
男子からは「誰お前?」という顔をされると思います。
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職業(その56) 

今週末も雨です。
まあ風邪を引いてどこへも出かけられないので、別にいいと言えばいいのですが。
イベントがあった方は大変お気の毒でした。

そんな土曜の恒例企画、「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『郵便配達員』です。

いわゆる郵便屋さんです。
犬ですので手紙を読まずに食べることはありませんが、
さて、いぬじの働きぶりやいかに。
では行ってみましょー。


いぬじが郵便配達員として働き始めてちょうど1か月。
すっかり道も覚えて、毎日楽しく仕事しています。
ちなみに普通の原付(カブ)には乗れないので、いぬじ用の特別な小さいバイクを用意してもらいました。
モンキーバイクより小さいサイズです。
しかも電動なのでほとんど子ども用のおもちゃにしか見えません。
でもちゃんと走ります。配達がんばってます。

さて、おそらく配達を仕事にしている人にとって避けては通れないことのひとつと言えば、そう、
『犬に吠えられる』こと。
本人が犬好きであろうとなかろうと、郵便屋さんや宅配便の配達員さんは吠えられることがもはや宿命とも言えます。
犬であるいぬじも例外ではなく、犬のいる家の10軒に1軒以上でワンワンとけたたましく吠えられているのでした。しかし、そのほとんどが室内犬のため、いぬじは話しかけることもできず、配達を終えたらそのまま次のお家へ行くしかないのでした。

そんなある日のこと。
その日はとてもお天気がよく、いぬじもウキウキしながら郵便局を出発しました。
配達を始めて15分、とある犬のいる家に到着すると、普段家の中にいるはずの飼い犬が庭に出ていたのです。晴れて気持ちいいので外で遊ばせていたのでしょう。
しかしこの犬(ダックス・オス・5歳)はまたよく吠えるのです。人が通るたびにワンワンと大きな声で吠え続け、通りがかりの人の顔を曇らせていました。飼い主さんはたまに家の中から「ダメよ~」「静かにしなさ~い」とちょっと大きめの声を掛けているだけです。
そこへいぬじが来たものですから、それはもうえらい剣幕で吠え始めました。いぬじはとりあえず「こんにちは」と挨拶しました。
「なんだよ、おまえ犬かよ」
「はい、いぬじです」
「おれはケンケンだぞ。犬だからってさべつはしないからな、おれはほえるんだからな」
「どうしてほえるんですか」
「どうしてってそんなのあたりまえだろ」
「ぼくはほえたらいけないっていわれます」
「はあ?そんなのおかしいだろ、おれら犬だぞ、ほえるのがしごとだぞ」
「ぼくのしごとはゆうびんはいたつです」
「そんなのふつうの犬のしごとじゃないだろ」
「ふつうじゃないですか」
「そうだよ、ふつうの犬はほえなきゃいけないんだぞ」
「はい、でもぼくはほえるとかーちゃんにしかられます」
「ふーん、おまえのかーちゃんかわってるな」
「でもけんけんさんのおかあさんもちゅういしてます」
「なに言ってるんだよ、ちゅういしてなんてしてないだろ」
「でもさっきからしてます」
「ちがうぞ、おれといっしょにほえてるんだぞ」
「ちがいます、ちゅういです」
「……ほんと、か?」
「はい、ほえちゃだめっていってます」
「でも、おれ、ほえてるし」
「ほんとはだめだとおもいます」
「じゃあおれ、今までかんちがいしてたのか?」
「はい」
「じゃあおれ、今までやっちゃいけないことしてたのか?」
「しらなかったからしかたないです」
「じゃあおれ、これからほえちゃだめのか?」
「できるだけほえないほうがいいとおもいます」
「わるいやつが来てもか?」
「わるいやつにはおもいっきりほえていいとおもいます」
「わるいやつってだれだ?」
「だれもいないときにこっそりいえにしのびこむひとです」
「そんなやつ今までいなかったなあ」
「それはよかったです」
「…わかったよ、じゃあおれ、ほえるのやめる」
「それがいいです、じゃあまたあした」
「うん」

翌日もケンケンの家に配達する郵便物があったので家の前に行くと、ケンケンは家の中にいました。ケンケンは全く吠えず、「これでいいんだろ」という顔をしていぬじを見ていました。いぬじは大きく頷いて、郵便物をポストに入れました。
その翌日はケンケンの家に配達するものはなかったのですが、家の前を通った時、ちょうど飼い主さんがご近所さんと立ち話をしていました。
「ほんとびっくりよ、急に吠えなくなったの。何か病気かと思って病院連れて行ったんだけど、どこも異常なしだって、どうしちゃったのかしらね」
と喋っていたので、いぬじは、
「けんけんさんはげんきです。これからはわるいひとにしかほえないです」
と伝えてきました。

めでたしめでたし。



その後、いつの間にかいぬじのことが噂になり、
「犬を吠えなくしてくれる郵便屋さん」として
話題になったとかならなかったとか。
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