職業(その38) 

ようやく今夜から梅雨らしい天気になるようです。
明日は友達と会うのでもちろん降らない方がありがたいと言えばありがたいのですが、ここまで晴れ続きだとかえって雨の方がいい気すらしてくる空梅雨ぶりです。
紫外線の量も減りますし。

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『テーマパークのスタッフ』です。

子どもの頃一度は憧れたという人も多い遊園地でのお仕事、
いぬじはどんな働きぶりを見せるでしょうか。
でははじまりはじまりー。


いぬじがテーマパークで働き始めて早2年。
決して規模は大きくありませんが、昔から地元で愛されており、家族3代で通っているというお客さんも珍しくない遊園地です。
一時は閉園の危機にも直面しましたが、その当時の園長の奇抜な発想により無事乗り切り、今では安定した来場者数を記録しています。
ちなみに奇抜な発想のひとつは、とある着ぐるみキャラを作ったことです。
相当奇抜なやつです。
見た目はご想像にお任せします。

さて、今いぬじが担当しているのは、エアトレインという乗り物です。
高さ3mのレールの上を真っ赤な可愛らしい列車が走り、まるで空中を進んでいるような感覚が味わえるアトラクションです。
時速15km程度でゆっくり園内を回るので、小さいお子さんからお年寄りまでのんびり景色を楽しむのにぴったり。特に身長制限でまだ乗れないアトラクションが多い子どもさんは、一日に何回も乗ってくれたりもします。
いぬじは、その運転手を務めているのです。
昔おサルの電車というのがありましたが、
タヌキ
もといワンコの空中列車として家族連れにじわじわと人気が広がってきました。
運転手と言っても完全自動運転ですので、基本的に運転席に座っているだけなのですが、時々「ただいま、ゆっちょくんのあたまのうえをはしっております」というようなアナウンスをするという大切な役目も担っています。
ご想像通り、ゆっちょくんというのが前述の着ぐるみキャラです。
相当奇抜な奴です。

週末には少し行列ができるほどのエアトレインですが、今日は平日。おじいちゃんおばあちゃんに連れられた小さなお孫さんがちらほらと乗りに来てくれる程度ですが、いぬじはこういうゆったりした時間の流れが大好きです。
たまに大学生くらいのカップルが乗ってくれますが、ほとんど景色も見ず、いぬじのアナウンスもまるっと無視でおしゃべりに夢中ということも多く、いぬじはちょっとイラッと
することはなく、「たのしんでくれてうれしいなあ」と思っています。

今乗っているカップルもいぬじそっちのけでお喋りに夢中ですが、いぬじは犬並に耳がいいので比較的小声で話していても全部聞こえているのです。
今日は、そんなカップルの会話をちょっと聞いてみましょう。

「ねえねえコウ君、次何乗る?」
「絶叫系とかは?」
「え~、ちょっと怖いかも~」
「それじゃホラーハウスとかは?」
「え~何コウ君、私のこと怖がらせて抱き付かせようとかしてる?」
「(図星)いやいや、ほら、これすごいのんびりしてるからさー、次はちょっとスリルのあるのがいいかな~って」
「ほんとに~?私結構こういうのんびり系好きだからー、そんなスリルとか別にいいよ~」
「へ~、じゃあ映画もホラーとか観ない派?」
「あーもう、全然無理無理無理」
「じゃあさ、一番怖いものって何?」
「え~、一番怖いもの?なんだろーなー、うーん、…パパ?」
え゛っっ
「嘘嘘、全然怖くないよー」
「(ほっ)マジでシャレになんないからそれ」
「アハハ、私には超甘だよー、まあ怒ると怖いのはほんとだけどね~」
「…え?どういう時に怒んの?」
「一番怖かったのは、中学時代に塾行ってるふりしてそん時の彼氏と会ってた時かな~」
「(元カレの話かよ) …バレたんだ」
「そうそう、それがさ~、駅前歩いてたら会社から帰ってきたパパとバッタリ会っちゃって~、周りに人いっぱいいるのに『お前美咲と付き合ってんのか!!』って大声挙げて、もう恥ずかしいったらなかったし」
「…」
「それでさ、彼氏逃げちゃったんだよ、ひどくない?」
「…」
「結局そのまんま自然消滅だもん、パパに文句言ったら『それだけの男だったんだからむしろ俺に感謝しなさい』って何かちょっとにやついてんの、ムカつくよね」
「……」
「そうそう、最近も『変な男に引っかかってないだろうな』とかいちいち聞いてくんだよね~。コウ君が変な男なわけないじゃんね」
「…なんか、のど乾いてきた」
「あ、そうだね、じゃあ降りたらカフェ入ろ」
「…うん、できればビール飲みたい」
「え~ダメだよー、飲んだら乗っちゃダメって書いてあるアトラクション結構あるし」
「そう、だね」
「とうちゃくでーす、ごじょうしゃありがとうございました、おきをつけておおりください」
「ワンコの運転手さんバイバ~イ、ほらコウ君も」
「…ばいばーい」
「ありがとうございました。あとがんばってください」
「…うん、ありがとう」
「ん?コウくん何か頑張るの?じゃあ私も応援したげるね~がんばれ~」

その後、一人乗りの回転ブランコでキャーキャーはしゃぐ美咲ちゃんの後ろで、生気のない表情で遠くを見つめているコウ君の姿がいぬじから見えましたとさ。
おしまい。


その後、コウ君と美咲ちゃんが続いたかどうかも、
ご想像にお任せいたします。
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職業(その37) 

しし豆に紐を付けて庭先に出しておいたところ、
数分で家の中に入って、
しばらく後に居間に入って来て、
五豆にちょっかいかけられそうになって、
座卓に飛び乗って(綺麗好きの方すいません、猫飼いってそんなもんです)、
机の端にあった私のマグカップを回るような動きをして、
「危ない危ない!!」
とカップを押さえたものの力及ばず、
そのまま座卓を跳び下りてお茶入りのカップを落としました。
あまり入っていなかったのが不幸中の幸いでした。

というのが今日一番の出来事だった週末ですが、
気を取り直して、土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『通販会社のコールセンタースタッフ』です。

これまでは犬という立場を利用した働きぶりが多かったいぬじ。
今回はその利点(?)は一切使えないお仕事ですが、無事勤まるのでしょうか。

それでははじまりはじまりー。


いぬじが通信販売のコールスタッフとして働き始めて間もなく半年。
初めのうちはクレーマーっぽいお客さんにしどろもどろになったこともありましたが、今ではいぬじなりにちゃんと受け答えできるようになってきました。
お客さんはまさか自分が犬と喋っているとは露ほども思わずに。

さて、いぬじが今担当しているのは、以前この会社で買った家電に関する問い合わせの電話です。今回のお相手はどうやら高齢の男性のようです。
では、その通話の内容をしばらく聞いてみましょう。

「おでんわありがとうございます、じゃぽねっとかたか、こーるせんたーのいぬじでございます」
「あーもしもし、あのね、印刷がねえ、できなくなってしまったもんで」
「いんさつとおっしゃいますと、ぷりんたーでございますか」
「そうそう、そのプリンターね、今日急に動かなくなったもんでね」
「それまではせいじょうにいんさつされていましたか」
「昨日暑中見舞いを印刷してたんだけどね、それはちゃんと出来てたんだよ。それが突然うんともすんとも言わなくなってしまって、こりゃどうしたもんかと思ってね」
「それはごめいわくをおかけしました。ではさいしょに、たいへんしつれいですが、でんげんこーどはしっかりささっておりますでしょうか」
「え?ああ、そうか、ちょっと待ってよ、ええと、よっこいせ、このコードか、これは、と、こっちのコンセントだったかな、……
 もしもし、お待たせしました、うん、ちゃんと挿さってたよ」
「それはしつれいいたしました。それではつぎに、ぷりんたーはぱそこんとおつなぎですか」
「そうそう、ノートパソコンってやつと繋いでるよ」
「ではそのぱそこんとぷりんたーはゆうせんでおつなぎですか」
「ん?優先? …んー、まあそうかもなあ、使ってなかった(電源)コードを(コンセントから)抜いて挿したからねえ」
「それではその(LANケーブルの)こーどはしっかりささっておりますでしょうか」
「え?それは今大丈夫だったって言ったでしょう」
「あ、失礼しました。あの、ぷりんたーのほうに(LANケーブルは)ちゃんとささっておりますでしょうか」
「ああ、そういうことか、ちょっと待ってくれよ、ええと、どっこいせ、今度はこっちか、……
 ああもしもし、そっちもちゃんとしっかり(電源コードが)挿さってましたよ」
「ありがとうございました。それではどうようにぱそこんのほうも(LANケーブルが)しっかりささっておりますかごかくにんいただけますか」
「はいはい、今度はパソコンね、…… はい、ちゃんと(電源コードが)挿さってますよ、うちはノートパソコンだけどずっとコードは挿しっぱなしだからね」
「おてすうをおかけいたしました。ではいま、ぱそこんとぷりんたーのでんげんはいれてらっしゃいますでしょうか」
「え?ああ、いや、パソコンは点いてるけど、プリンターは消してるよ」
「それではぷりんたーもすいっちをいれていただけますか」
「はいはい、つけました」
「(プリンターの)がめんひょうじはいつもどおりですか」
「ん?うん、(パソコンの)画面はずっと変わってないよ。ちょっとはいじってみたいけど、やり方が全然わからなくてねえ」
「それではいちどぷりんたーからちょくせついんさつをしていただきますので、いまからおつたえするてじゅんでそうさをおねがいします」
「…ん?パソコン使わないの?」
「はい、いんさつきのうがこしょうしていないかをかくにんするためでございます」
「なるほどね、できるかな、じゃあゆっくりお願いします」
「かしこまりました。ではまず、めにゅーというぼたんを」
「あっ」
「どうなさいましたか」
「ありゃー、あれ、このコード、なんでこんなところにあるんだ? おおい、幸江、お前このコード抜いたか?」
「ああ、それなら今朝掃除の邪魔だから抜いて奥にやったわよ」
「なんだ、それでか、それならそうと言っといてくれよ」
「はいはい、わかりました」
「ええと、これ挿して、とりあえずこの写真を、印刷、と」
ガガッ
「あー動いた動いた、なんだよもう、…ええと、何か大事なことを忘れてるような」
「モシモーシ」
「なんだったかな」
「もしもーし」
「ん?なんか聞こえたか?」
「あなた、さっきから電話してたけど大丈夫なの」
「あっ、そうか、もしもし、もしもし」
「はい、いぬじです」
「ごめんごめん、もう済んだわ、黄色いの抜けてた。それじゃあ」
プッ ツーツー

めでたしめでたし。



「黄色いの」はLANケーブルです。
実際もこういう問い合わせって結構ありそうな気が。
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職業(その36) 

今日も朝からいい天気で気温も上がったので、いそいそと洗濯をして庭に干したのです。
午前中には乾くだろうなーと期待して家に入り、小一時間。
いぬいぬじにおしっこをさせようと玄関を開けると、

煙たい。

あー…と気づいて物干し場の方へ回ると、やっぱり裏のお宅が、畑で草を燃やしてました。
生乾きの洗濯物を家に入れました。

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『タクシードライバー』です。

毎日様々な人を乗せて走る街の運転手さん、
いぬじがやるとどんな風になりますやら。

それでは張り切ってどうぞー。


いぬじがタクシードライバーになってもうすぐ1年。
元警視庁の敏腕刑事でも元海兵隊員でもないので、いたって平和に運転業務に勤しんでいます。
たまにちょっと道を間違えますが、間違えたことは黙っておいて(気が小さくて言い出せないので)、その代わり降車直前にパッと上がってしまった料金分をおまけしてかえって喜んでもらいます。

さて、たった今いぬじが乗せたお客さんは、実は芸能人です。
最近テレビでちょくちょく見かけるようになった若手ピン芸人さんなのです。
しかし普段あまりテレビを観ないいぬじは、お客さんが芸能人だと全く気付いていません。
そんな二人の会話を、ちょっと覗いてみましょう。

ガチャ
「ごじょうしゃありがとうございます」
「ジャパンテレビのスタジオまでお願いします」
「かしこまりました」
「…え、運転手さん、ひょっとして、犬なん?…へえ、いぬじさんっていうんか」
「はい、いぬじです」
「僕はゆうじやけどね」
「ゆうじさんですか」
「あー、運転手さん僕のこと知らんかな」
「はいしりません」
ぐはっ、俺もまだまだやなー、もっと頑張らんと」
「がんばってください」
「あ、ありがとうございます」
「ゆうじさんははいゆうさんですか」
「いやいや、この顔で俳優は無理ですわ、芸人です、芸人。『ヒョウ柄スーツに身を包み、いざ、おかんライダー三畳!狭っ!』ってギャグ、聞いたことありません?」
「ないです」
ぐばっ、あいたたたた、運転手さん、居合の達人やね」
「みあいのたつじんですか」
「そうそう、今回のお見合いで記念すべき100回目、これがダメなら101回目のプロポーズ、ってちゃうがなー」
「ふろぼうずですか」
「そうそう、あの銭湯には坊主の霊がいて湯船に浸かっているとどこからともなく読経の声が、ってそれもちゃうがなー」
「どひょうのこめですか」
「そうそう、あの力士は塩まく代わりに米粒まくもんやさかい、砂かぶりのお客さんがあいたたたたー、ってだからちゃうがなー」
「ねこかぶりですか」
「そうそう、付き合ってる時はおとなしくてやさしい彼女と結婚したら1か月で鬼嫁に、5年経ったらおかんライダー三畳!って、ギャグまで言わせてもろてえらいすんません、ってもうええわ」
キーッ ガチャ
「「ありがとうございましたー」」
「1690えんです」
「…運転手さん、僕とコンビ組まへん?」

1か月後。
いぬじはいつも通りタクシーにお客さんを乗せて街を走り、芸人さんはレギュラーが2本増えましたとさ。
めでたしめでたし。


タクシードライバーでなくてもよかったんじゃないか、
という切れ味抜群の鋭いツッコミ、
どうぞそっと胸の奥にしまっておいてください。
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職業(その35) 

今日はよく晴れ、風が涼しくてとても過ごしやすい一日でした。
お昼は外食にし、買い物をして2時過ぎに帰ってきましたが、このまま家の中で過ごすのはあまりにもったいないと思い、犬達を連れ出して広い公園へ行ってきました。
旦那がベンチでぼけーっとしている間、犬に気付いて話しかけて来てくれた若い娘さん二人とおしゃべりに花を咲かせました。
独身男性なら最高の一日だったと思います。
あ、私もとても楽しかったですよ。

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『大工』です。

小学生男子のなりたい職業ランキング11位の大工さん、
いぬじはどんな働きぶりを見せるのでしょうか。
ではいってみましょー。


いぬじが大工として働き始めて丸一年。
最初の頃は釘もまともに打てませんでしたが、こつこつ頑張ったおかげで、今はなんとか仲間に迷惑を掛けないくらいにはなりました。
ただ、まだ高い所が苦手です。
なるべく低い場所の仕事を回してもらっています。
妹に「にいにゃんだらしにゃいにゃ」と家の階段の上から見下ろされています。

さて、今いぬじが勤める工務店が建てているのは、とあるご家族の新居です。
30代の夫婦と小学生二人&幼稚園の子ども達、それにこれから奥さんの両親が一緒に住むことになる二世帯住宅です。
これまでは別々に住んでいましたが、ご主人の転勤と両親宅の老朽化を機に、両親の土地に建て替えることになりました。
ちなみにどこかで見たような家族構成ですが、あれは奥さんの弟妹と一人息子ですから全然違うのです。

建設が始まって二ケ月が経ちました。土地が広いので、なかなか立派な家です。
玄関キッチンバストイレが全て2つずつある完全分離型の二世帯で、1階が両親の住まい、2階が娘夫婦の住まいですが、1階に2人、2階に5人という人数構成のため、1階の2室を子供部屋にすることにしました。
小学生の子ども二人はおじいちゃんおばあちゃんが好きですし、上が5年生の男の子、下が3年生の女の子と、あと数年もすればそれぞれ思春期に入って親と距離を取りたくなってくる年頃ですので、自分の部屋が親のいる階と別になっていることに子どもたちも喜んでいるのです。
娘夫婦も、両親が孫に甘いばかりのジジババでないことをよくわかっているので、むしろ行儀作法や家の手伝いなどを自分達よりしっかり教えてくれると期待していますし、親にうるさく言われるよりおじいちゃんおばあちゃんに言われた方が素直に言うことを聞くことも知っているので、まさに全員幸せ、これ以上ないマイホームなのです。
ただ一点、ご主人の心境だけを除いて。
「下にオーナー夫婦が住んでいるマンションだと思うことにしよう」と決めたことは嫁には秘密です。
土地を買うほどの収入がない自分の責任だと割り切りました。

話をいぬじに戻しましょう。
先日無事棟上げが終わり、今は柱や梁を金具やボルトで固定する作業を行っています。
いぬじはもちろん1階担当ですが、今回は1階が2階より広く固定する箇所も多いので、いつもなら2階を担当する大橋さんも手伝ってくれています。
大橋さんは53歳、この道35年の大ベテランです。犬が大好きでいぬじの面倒もよく見てくれる、頼れるおっちゃんです。
「いぬじ、そっちはどうだ」
「はい、まだおわってないです」
「ああ、そりゃ見りゃわかる。あと何本だ」
「あと、12ほんです」
「なんだ、意外と早いな、って、あっち全然終わってねえじゃねえか」
「でも、さっきかぞえたら12ほんでした」
「…1、2、3、…なんだ、ボルトの数じゃなくて柱の数かよ」
「はい、はしら12ほんです」
「しゃあねえな、そっちも手伝ってやるよ」
大橋さんは、いぬじの数倍のスピードでどんどんボルトを取り付けていきます。いぬじが2時間かかりそうな量を、30分で終わらせてしまいました。
「やっぱりおおはしさんはすごいですね」
「なあに、長くやってりゃ誰でも出来るようになるさ」
「おおはしさんはどうしてだいくになったんですか」
「まあ、親父の影響だなあ」
「おやじさんですか」
「親父も大工でさ、小学校入ったばっかの頃だっけなあ、一度現場に連れてってもらったことがあるんだよ。親戚の家だからいいだろうってな。そん時もちょうど棟上げが終わった頃で、中まで入れてもらったんだよ」
「ぼるとですか」
「いや、あの家は在来工法ってやつでな、ボルトどころか釘もほとんど使わないで建てたんだ」
「つかわないでだいじょうぶですか」
「ああ、そりゃ見事なもんでな、あらかじめ木材に開けた穴にぴったりはまるように切った木を組み合わせていくんだよ。その仕事がものすごくかっこよくて憧れてなあ」
「かっこいいです」
「ま、実際俺はボルト使ってんだけどな。俺の息子も小さい頃に現場連れてきてたら、『大工になりたい』って言ってくれてたのかもしれないな」
「むすこさんですか」
「っつってももう大人だぞ。『時代は公務員だ』って、郵便局で働いてるよ。去年結婚して今度孫が生まれるんだが、…そうだな、孫には俺の仕事見せとくか、なんてな。あ、話し込んでちゃまずいな、そろそろ仕事戻るぞ」
「はい」

一か月後。
仕事終わりにいぬじが大橋さんを呼んで、
「これむすこさんにわたしてください」
といぬじがすっぽり入れそうなほどの大きさの箱を持ってきました。
「しゅっさんいわいです」
大橋さんが息子さんの家に行って一緒に箱を開けると、中には色とりどりの積み木が入っていました。中には穴が空いていたり、ちょうどその穴にはまる小さな円柱状の突起が付けられている物があり、差し込んで組み立てられるようにもなっていました。
一緒に入っていた小さなメッセージカードには、
「ぼくがつくってきょうだいでいろをぬりました あそんでください」
と下手くそな文字で書かれていました。
一年後には、赤ちゃんのお気に入りのおもちゃになっていたそうです。

めでたしめでたし。


あ、あと、公園でセントバーナードに会いました。
本当にいい一日でした。
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職業(その33) 

今日は旦那が友達と出掛けていて留守でした。
私は「一日好きなことができる」と楽しみでした。

が、
異常なほどに眠くて眠くて、
ほとんど寝てしまいました。
あーあ。

さて、そんな今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『スーツアクター』です。

要するに、着ぐるみに入る人です。
いや、入る犬です。

ではどうぞー。


いぬじがスーツアクターとして働き始めて丸一年。
大変な仕事ですが、お客さんが自分を見て皆笑顔になってくれるのでやりがいを感じています。
実際は半分吹き出しているのですが、いぬじには全部同じ笑顔に見えるのでいいのです。

さて、現在いぬじが入っている、もとい成り切っているキャラクターは、とある日本映画に出てくるロボット犬です。ヒロインのペット的存在で、小さいながらも要所要所でヒロインや主人公を助ける、大変優秀な護衛犬の役柄です。
実際の映画では技術を駆使したフルCGで作られていますが、試写会や宣伝イベントなどのために着ぐるみが用意されたのです。
この着ぐるみがあつらえたようにいぬじにピッタリで、オーディションなしで合格。喋る必要もなく、ただ俳優さんにトコトコついて回るだけでお金がもらえ、その上皆に可愛がってもらえるという、なんとも羨ましい仕事です。
俳優さん達のサインをもらったかーちゃんもご機嫌です。

さて、そんなある日のこと。
いぬじはヒロインである凛子という若手女優の楽屋に呼ばれました。彼女は映画同様、いぬじを大変可愛がってくれています。いぬじは楽屋の扉をノック、ではなく前足でちょいちょいとこすりました。
「りんこさん、ぼくだよ」
「いぬじ君、どうぞ」
いぬじが楽屋に入ると、そこには元気のない凛子がいました。
「どうしたの」
「ええ、ちょっと疲れちゃって。いぬじ君の顔が見たくなったの」
普通の男性なら飛び上がって喜びそうなセリフでしたが、いぬじは机の上に用意されたお菓子の方に目が釘付けでした。
「ふふふ、好きなの食べていいよ」
「わーい」
とお菓子に手を伸ばそうとしたいぬじは、机の脇に、綺麗な包装紙に包まれた小さい箱が置いてあることに気付きました。
「これなあに」
「多分、ファンからのプレゼントだと思うんだけど、気づいたらそこにあったの」
「あける?」
「ううん、何か変だし、誰が置いたかわからないからマネージャーに連絡するね」
「わかった」
凛子がマネージャーに電話すると、数分後に彼が息を切らしてやってきました。
「ハァ、ハァ、大丈夫か」
「どうしたの、そんなに慌てて」
「よ、よかった」
実は、数週間前から、凛子の事務所にストーカーまがいの手紙や荷物が届いていたのです。幸い危険はありませんでしたが、事務所は凛子に見せる前に全て処分していました。
「ハァ、ハァ、この箱は、僕が外で開けてくるから」
「気を付けてね」
「ちょっとまって」
「どうした、いぬじ」
「ぼくあけるよ」
「えっ、いや、それは危険だよ」
「ううん、ぼくあけたい」
「…わかった、そこまで言うなら」
本当は開けたくなかったマネージャーは、これ幸いと箱をいぬじに預け、離れたところから見守ることにしました。
映画の中のロボット犬さながら、ヒロインを守るためにいぬじ自ら名乗り出たのだと、凛子もマネージャーも感激したのです。

いぬじが建物の裏手の誰も来ない場所に箱を置き、
テープをはがしてふたを開けると、
ピンっという音がして、
とんでもない悪臭、
いえ、いぬじのとってはこの上なくおいしそうな匂いが辺りを漂う始めました。
「おーーいいぬじーーー、何が入ってたー??」
「かんづめだよーーー」
「はぁ?缶詰ぇ??」
「あけちゃったからいただきまーーーす」
マネージャーが一体何なんだと近づいてくると、
「うわっ、くさっ、くさっ、何だこの臭さ、うえぇ、だ、駄目だ」
「おいしいよ」
「こ、これもしかして、噂に聞くシュールなんとかか」
「あかいかんづめだよ、おいしいよ」
それは、世界一臭いと言われるシュールストレミングの缶でした。
箱のふたを開けると、缶詰にセットされていた金具が外れて缶のフタが開く仕組みになっていました。金具は缶のフタに少しだけ穴を開けて付けられていたため、上からビニールで包まれていたものの、人間にはわからないくらいほんのわずかに臭いが漏れていたのです。
しかし、いぬじの鼻はごまかせませんでした。
そして、絶対美味しい物が入っていると思ったいぬじは、自分から箱を開けることを申し出たのでした。

その後、
いぬじは凛子の事務所にも気に入られ、事務所に所属することになりました。
人間では入れないような小さな着ぐるみに入る仕事の他、犬役としての仕事も舞い込むようになりましたとさ。

めでたしめでたし。




あんまり着ぐるみ関係ありませんでした。
すいません。
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