職業(その10)
今日は6時に起きて犬猫にご飯をやって一通り家事をやったら二度寝の気分もなくなったので、モーニングにでも食べに行くかということになったのです。
目当ての喫茶店に向かったのですがあいにくお休みで、別の初めての店に行ってみたところモーニングメニューはあったのですがあまりお得感はなくちょっと残念でした。
名古屋人がうらやましい。
さて、今日は土曜恒例企画「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
早いもので10回目となる今日の職業は、『営業』です。
はい、サラリーマンの、営業さんです。
ちなみに3行上の説明文、毎週同じですが覚えられないのでコピーして貼ってます。
多分、これからもずっとです。
それでは張り切ってどうぞ―。
いぬじが中堅寝具メーカーに入社して3か月。
なぜ寝具メーカーに入ったかと言えば、ひょっとしたら仕事中に寝ても許されるんじゃないかと思ったからというのは一応上司には伏せています。
さて、新入社員の登竜門と言えば、そう、飛び込み営業です。
この会社では、飛び込み営業で成果を出せるか否かでその後の出世が決まると言っても過言ではないともっぱらの噂であり、事実、営業成績の良かった者は社歴に関係なく上のポストへ引き上げられ、確実に給料もUPしていました。
大きくない会社ですが、頑張りはちゃんと認められるということで、社員のモチベーションは高く、また寝具自体の品質もしっかりしており自信を持って売れるため、今どき珍しいくらい大変働きやすい職場と言えました。
ただ、残念な事に、知名度が低いのです。
良い商品ですからその良さをわかってもらえば少々お高いのも納得してもらえるのですが、いかんせんイ○アやニ○リで1万円で羽毛布団が買えてしまうこのご時世、5万や10万の布団はそう簡単に売れるものではありません。
さて、新人営業マンいぬじ、今日はどのようにこの高級羽毛布団を売り歩くのでしょうか。
体がちっさいいぬじ、大きな布団を持つことができないので、特別に座布団サイズの羽毛布団を作ってもらいました。それを背中にくくり付けて住宅街を歩いて回るのです。
歩くのは大好きなので全く苦ではありません。時々ちょっと寄り道したりしますが、ハッと気づいてまた元気よく歩き出します。
その時、昭和臭のする一軒の家が目に留まりました。なぜこの家が気になったかと言えばきっと自分の家に雰囲気が似ていたからなのですが、いぬじはそういうことはどうでもよく、ちょっとお水でももらえないかなあというくらいの気持ちでチャイムを押しました。
ピンポーン
「はいはい」
出てきたのは見るからに財布のひもが固そうな60代くらいの主婦です。
「あれま、犬が来たよ」
「あの、おふとん」
「布団?ああ、布団の営業かい、いらないいらない、帰ってちょうだい」
「あの、おふとん」
「だからいらないっt」
主婦の二度目の答えが終わらないうちに、いぬじは背中の布団を降ろし、玄関の上がり口に置きました。
「え?これ、座布団?…のわりにはふわふわ…って、何これ、ほんとにふわふわじゃない、こんなのに座ったらすぐぺっしゃんこでしょう」
「ちがうの、ねるの」
と言いながら、いぬじは羽毛小布団に乗り、丸くなりました。
そして、本当に目をつぶって眠り始めたのです。
「『違うの』ってあんた結局上に乗ってんじゃないの、
ちょっと、あんた、そんなとこで寝たら風邪引くよ、
…ってそうじゃない、人ん家の玄関で寝ないでったら、
…
…」
スヤァ
「…なんて幸せそうに寝るんだろうねこの子、
でも起きてもらうからね、ちょっとちょっと」
と、ぽんぽん背中をたたかれたいぬじ、ハッと起きて、
「あ、またねちゃった、ごめんなさい、それじゃかえります」
「えっ、あんた、ちょっと待ちなさいな、結局何しに来たのよ」
「ええと、このおふとんかってほしいなとおもったんだけど」
「そんな小さいのあっても困るわよ」
「ちがうの、ほんとはもっとおっきいの」
「え、じゃあ普通の羽毛布団?」
「うん、おっきいの、でもたかいの」
「プッ …あんた正直だね。じゃあね、今度もっと大きい人にそのおっきいの持ってきてもらってよ、ちょっと見てみたいから」
「うん」
一時間後、再び上司とこの家を訪れたいぬじ。
7万円の羽毛布団、夫婦二人分で2枚売れました。
その後もこんな調子のまま三か月連続で営業成績トップになったいぬじ、半年後には課長補佐への内示が出ました。
でも歩いて布団売って回る方がよかったので断りました。
数年後、
伝説の飛び込みとして名を馳せたやら馳せなかったやら。
- [2016/12/03 18:54]
- 〇〇いぬじ |
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