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職業(その18) 

今日は立春らしく、とても暖かい一日になりました。

本当に久しぶりに晴れ渡る青空を見ました。
犬の散歩中も何度も空を見上げました。
いぬじは下ばっかり嗅いでました。

さて、今日は土曜恒例連続企画、「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『看護師』です。
向いていそうな全く向いていなさそうな、
私もまだオチが全然見えませんが、
とりあえず見切り発車でいってみましょー。


いぬじがとある町の内科医院で働くようになって丸三年。
この病院に来る前は、入院設備もある総合病院に一年ほどいたのですが、
夜勤で寝てしまったため、首になりました。
ちなみに3回寝ました。
人と暮らす犬は、ほぼ昼行性です。

さて、今働いているのはもうすぐ70歳になろうというおじちゃん先生が一人でやっている病院ですが、この先生、なかなかの名医として評判で、隣町からわざわざ診に来てもらう人もいるほどです。当然患者さんはひっきりなし、看護師のいぬじも毎日大忙しです。

風邪の流行っているこの季節、今日は休診日の前日ということもあり、廊下まで診察を待つ患者さんであふれかえっていました。
見るからに顔が赤く、とてもしんどそうな患者さんもいる一方で、薬をもらいに来ているだけのお年寄りや、すっかり成人していそうな子どもの付き添いで来ている元気なお母さんの姿もあります。しかもこのお母さん、相当な恰幅で、二人分の席を占領していました。
待合室の椅子は当然症状の重い人が優先ですが、お母さんは自分の斜め前でしゃがみこんでいる患者さんを気にもせず、堂々と座ったまま。見るに見かねた向かいのおばあさんが、「こちらの方に席を譲ってあげなさいな」と声を掛けましたが、「私達の方が先に来てるんだし、座ってないとこの子に肩を貸せないでしょ!」と言い返す始末です。

受付にはガラス戸が付いていて、開けない限り待合室が見えないので、窓口のスタッフはこの様子に気付いていませんでした。
以前にも同じようなトラブルがあり、先生は細心の注意を払うようスタッフに言っておいたのですが、今日は特別忙しく、また運の悪いことに受付の電話が鳴ってお母さんの声が届かなかったのです。

が、
いぬじの耳には届きました。
聴力は人間の約5倍。
ちょうど血圧を測り終えたいぬじは待合室にすっとんでいきました。

待合室のドアを開け、開口一番、
「げんきなひとはせきをゆずってください」
と言いました。
しかし、誰も立ち上がろうとはしません。
「きょうはいすがたりないので、しんどいひとにすわってもらってください」
とさらに言うと、薬をもらいに来ただけのお年寄りが二人、立ちました。
空いた椅子に、しゃがみこんでいた患者さんと、今受付を終えた、見るからに具合の悪そうな人が座りました。
立ち上がったお年寄りの1人はちょうど名前を呼ばれ、処方箋をもらって帰っていきましたが、もうひとりのお年寄りはまだもう少しかかりそうです。
いぬじはさらに、
「こうれいのかたにせきをゆずってください」
と言いました。
しかし、相変わらずお母さんは微動だにしません。他の患者さんの目が自分に向けられていることにすら全く気付いていないようです。立ち上がったお年寄りはいぬじに「もういいんだよ」という視線を投げかけます。

しかしいぬじはそれを、「どうしても座らせて」という視線だと思ったのです。
そしてその願いを聞き入れれば、きっとご褒美がもらえると思ったのです。

いぬじはててててと歩いて行き、お母さんの目の前に立ちました。
患者さん達の全視線がいぬじに注がれます。

いぬじはお母さんに、
「しょしんのかたですね」
と言いました。
「そうだけど、それが何よ」
「あの、もらってもらいたいものがあるんです」
「…え?」
他の患者さんも意外そうな顔で成り行きを見守っています。

「ぼくにはもちきれないので、おくにきてもらえませんか」
「へえ、…まあいいわ、ケンちゃん、お母さんちょっと行ってくるから、一人で待てる?」
「…」
「ごめんね、行ってくるわね」
そうしていぬじとお母さんは廊下へと消えていきました。

ケンちゃんは一人になるとさっと立ち上がってドアのすぐそばまで行き、スマホをいじり始めました。
5分後、お母さんは、年末に残った製薬会社のカレンダーとボールペンとメモ帳を手に戻ってきました。
ケンちゃんは、自分の名前が呼ばれるまでドアのそばから離れませんでした。
お母さんはその隣に立とうとしましたが、ケンちゃんに、
「そこ、邪魔」
と言われ、ドアの外から見守りました。
めでたしめでたし。



ケンちゃんはただの風邪でした。
3日で治りました。
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