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職業(その31) 

いよいよ今年のゴールデンウィークも残すところあと一日となりました。
これが終わると、次の祝日は海の日です。
月一くらいはほしいところです。

さて、そんな連休4日目の今日は土曜日ですので、土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『写真店店員』です。

休みが続いて曜日を忘れそうになる頃に、土曜であること伝える役目も果たすこの企画。
私もちょっと忘れかけてました。

では今日のお話の始まり始まり―。


いぬじが町の写真屋さんで働き始めて半年。
60を過ぎた店長さんが夫婦で切り盛りしているお店でしたが、奥さんが少し体を悪くしたので、いぬじがアルバイトで入ることになりました。
いぬじは撮られるのは苦手ですが、できた写真を見るのは好きなので、仕事は楽しく頑張っています。
ちなみにとーちゃんのカメラセンスは壊滅的です。

さて、デジカメやスマホ撮影が当たり前の時代の中、ここ最近、再び使い捨てカメラの人気が出てきました。いぬじはこのフィルムカメラ用プリンターを使うのが大好きなのです。
今日も、使い捨てカメラの現像依頼が入りました。いぬじはわくわくしながら、ネガのプリントを始めます。
一枚一枚画面で画像の確認をしながら、色や明るさの補正をしていきます。逆光で顔が黒くなっていても、プリンターで明るさを調整して、そこそこ顔が見えるようにできるのです。
しかしいぬじは以前、海辺で真っ黒に日焼けしたサーファーの集合写真まで逆光だと思って大変明るくしてプリントしてしまいました。
バックの海と空が真っ白に飛んでいました。
幸い店長チェックで気づきました。

今回の使い捨てカメラは、店長の娘さんも通っていた近くの私立女子高の生徒のもので、制服姿の女の子たちが大勢写っています。
プリントしていくうちに、いぬじはふとあることに気付きました。どの写真でも、全く笑っていない子が一人いるのです。
いぬじは、「このこもとられるのがにがてなんだなあ、わかるなあ」と思いました。
すると1時間後、その笑顔のない女の子が写真を受け取りに来たのです。
確かカメラを持ってきた子は別の子でした。しかし引き取り証は確かにそのカメラのものです。
「友達が、取って来てって」
と言って、お金を払いました。
店長は、ひょっとするとこの子はお金を払わされているのではないかと思いましたが、そんなことを本人に聞けるはずもなく、そのまま写真を渡して見送りました。
「あのこ、げんきなかったね」
「そうだね、でも僕らにできることはないからね」
「わらってうつれるようになれるといいね」
「ああ、そうなるといいね」

数日後。
また例の子が写真を受け取りに来ました。やはり持ってきた子は別人です。
1回の代金は1500円くらいですが、この調子で払わされ続けたら、高校生にはかなりきつい金額になるでしょう。
「あの、こないだの写真、焼き増ししてください」
女の子はそう言って、数字を書きこんだネガをカウンターに出しました。一枚に付き平均4~5枚、ネガ一本で100枚近くあります。
店長はどうしても黙っていることができなくなりました。
「あの、差し出がましいようですが、このお金、お友達みんなから集めるんですよね」
「…えっ、いえ、あの」
「一枚は30円ですが、これだけあると3千円くらいになります。思い過ごしならいいのですが、あなたがお一人で払うことにならないかと心配になりまして」
「…いえ、大丈夫です」
「そうですか、それは大変失礼しました」
女の子はお金を払って出て行きました。

「あのこ、いつもげんきないね」
「うん、そうだね」
「きょうのしゃしんもまたわらってなかったね」
「そうだね」
その日、頼まれた焼き増しは全て店長が行いました。その間いぬじはデジカメプリントの方を進めていましたが、突然、店長が「そうだ!」と声を上げたので、いぬじはびくっとして同じ写真を2枚プリントしてしまいました。
「いぬじ、ちょっと頼まれてくれるかい」
「うん、いいよ」
「この写真、ここに先生写ってるだろ」
「うん、おんなのせんせい」
「この先生は僕の娘の里美の担任をしていたこともあって、今でもたまに寄ってくれるんだ。この時間なら学校を出てくる頃だから、校門の前で待って連れてきてくれないか。僕が待ってると通りがかりの人に不審者と思われるかもしれないけど、いぬじなら大丈夫だからね」
「わかった」
いぬじは店を駆け出し、女子高に向かいました。

いぬじが校門の前で10分ほど待っていると、先生が出てきました。ちなみに待っている間に散歩中の犬に3回吠えられました。
いぬじが先生をお店に連れてくると、店長がちょうど焼き増しを終えたところでした。
「こんばんは、先生」
「こんばんは。里美さんはお元気ですか」
「ええ、お陰様で頑張って働いてますよ」
「それはよかった。ところで今日はどんなご用ですか」
「この、先生の隣にいる子なんですが」
「あら、先日撮った写真ですね、…沢口さんが、何か」
「ひょっとして、いじめられていないかと気になりまして」
「いじめですか…?確かに、あまり笑わない子だとは思いますが、しかし…」
店長が受付と引取の状況を伝えると、先生の顔色が変わりました。
「わかりました。『この間の写真、私も見たいわ』と皆がいる前で話題を出して、写真を受け取った全員にお金を払うように伝えます」
「よかった。それなら『チクった』とも言われませんね」
「ええ」
「あの」
「あら、どうしたのいぬじくん」
「これ、さわぐちさんにわたして」
いぬじは小さい封筒に入った手紙を先生に手渡しました。

数日後。
再び使い捨てカメラを、今度は沢口さん本人が持ってきました。
いぬじがプリントを始めると、沢口さんの顔に、少し笑顔がありました。
「いぬじ、この間の手紙、何て書いたんだい」
「ほんとはひみつだけど、てんちょうさんにはおしえてあげる」

いぬじは、沢口さんへの手紙に、こう書いていました。

『ぼくもしゃしんをとられるのがにがてです。
 だからしゃしんだとうまくわらえないです。
 ねえちゃんもいっしょです。
 でもこのあいだおでかけしたらねえちゃんがわらってて、
 それをみたかあちゃんがとってもごきげんで、
 いつもよりささみのおやつがいっぱいもらえました。
 こういうのを
 「わらうかどにはにくきたる」
 っていうそうです。
 だから、さわぐちさんもわらうといいとおもいます。』

沢口さんの笑顔は、本当はちょっと思い出し笑いだったのですが、その後仲のいい友達が出来て本当に笑えるようになったそうです。
めでたしめでたし。


写真屋でもバイトしていたことがあるので、
つい書きやすくて長くなってしまいました。
なんとか短くしようとしましたが、これが限界でした。
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コメント

今日も心温まるハートフルストーリーを読ませていただきました。

実は私もいぬじくんと同じで、写真を撮られるのが嫌いなんです。
ここ最近の写真は、ほぼないです。
もし、急死したらお葬式で使われる写真はもちろん、遺影もないので家族はすごく困ると思います。
よく、殺人事件なんかの被害者の写真に成人式のが使われることがありますが、私は成人式にはお腹に長女がいて出産直前だったので写真もないし。
犯罪の被害者になったら、卒業アルバムの制服写真が使われるかもしれません。
そう考えると写真、拒否ばっかりではいけませんね。

たれくりたん様

長い話を読んでいただいてありがとうございます。
いぬじは最後まで勘違い野郎でした。

私も遺影がありません。
私も成人式の写真を撮っていないので、
多分免許証の写真を使ってくれると思うんですが、
ひょっとすると大学の卒業アルバムの写真、
…は本当にダメです。
笑顔を強要するカメラマンが、無理やり笑わせるためにひどくしょうもないギャグを言ったので、ものすごく苦笑しているのです。
撮っとくべきか、遺影用。

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