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職業(その32) 

今朝は強い雨が降り、午後になっても曇り時々雨という天気でした。
旦那は会社の同僚の方の結婚式に行っていたのですが、お天気が悪く気の毒だったなと思いつつ、こういう日は祝辞で
「雨降って地固まると申しますので―」
って誰か言ったかなあと思いました。

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『書店員』です。

「写真店の次は書店かい」と言われてしまいそうですが、身近な職業でないと書くのが大変難しいのです。
どうぞご容赦ください。
ではどうぞー。


いぬじが町の本屋さんで働き始めて半年。
ネット通販に押されて次々に同業のお店が閉店していく中、昭和の時代から地元の人々に親しまれている小さな書店です。
いぬじのかーちゃんも、小さい頃よくかーちゃんのとーちゃんと一緒に通っていました。
小6の時に買ってもらった心霊写真の本はクラス中に回され、返って来た時にはページがところどころ外れていました。

さて、個人商店の本屋は特色を出さないと潰れてしまうため、他の書店ではなかなか扱っていないような本も販売しています。
中でも、大活字本のコーナーがじわじわと人気を伸ばしています。
大活字本とは、一般的な本よりも字が大きく読みやすくなっている本のことです。1行辺り20字強しかないので、高齢者や、小さい字が苦手という人も読み進めやすいのです。
年配の方はネット通販をあまり利用しませんし、やはり紙の本で読みたいという人の多い世代ですので、自分の足で店まで来て、少し立ち読みをしつつ、本屋にいる時間を楽しみながら本を選んでくれます。
いぬじは小さいので重い本を運ぶのが苦手ですが、店内をうろうろしていてもそういうお客さんの邪魔にならないという理由で採用されたのです。
あと、マスコット的な意味もあります。
立ち耳・巻き尾のTHE 日本犬という姿が、高齢者に大変ウケがよろしいのです。

そんなある日、一人の男性がお店に来ました。男性はしばらく店内をうろうろしてから、
「すいません」
と、奥にあるドアに向かって大きな声を掛けました。
「はいなんでしょう」
「うわっ」
いぬじが足元の方からひょっこり顔を出したので、男性は大変驚いてつい本の平置きスペースに尻もちをついてしまいました。
「…あ、申し訳ない、いるとは思わなくて」
「いいえ、びっくりさせてごめんなさい」
「なんと、犬の店員さんがいるんだね、こりゃ驚いた」
「ぼくいぬじです」
「いぬじ君か、よろしく」
「いらっしゃいませ」
「ははは」
その時他にお客さんはおらず、二人はしばらくお喋りをしました。男性は最近仕事を引退したとのことで、家で何もしないでいると奥さんの目が気になり、しかし少し足を悪くしたためアクティブな趣味は持てず、何か面白そうな本でもないかと久しぶりにこの本屋に来たとのことでした。
「昔は子どもを連れてよく来ていたけどね、仕事が忙しくなって子どもが本に興味を示さなくなってからはさっぱり足が遠のいてね。いやー変わってないなあ、この店は。よく残っていてくれたなあ」
「かーちゃんもおなじこといってました」
「そうかい。いいよねえ、変わらない場所があるって言うのは」
「ぼくのおふとんはきたなくなってこないだすてられました」
「ははは、そりゃ残念だったね。そうだ、何かお勧めの本はないか尋ねようと思って呼んだんだ」
「どんなほんがすきですか」
「ああ、そうか、そうだね、…うーん、ずっと仕事関係のばかり読んでたからなあ」
「どんなおはなしがすきですか」
「おはなしか、…そうだ、昔手塚治虫を夢中で読んだよ」
「てつわんあとむですか」
「そうそう、それにブラックジャックとか火の鳥とかね」
「てづかおさむさんのまんがはあのたなにあります」
「うん、さっきちょっと惹かれたんだけどね、さすがにこの歳でマンガを読んでると妻がなんていうかなあと思ってね」
「しょうせつはどうですか」
「歴史小説は昔から結構好きだよ、三国志とかね」
「れきししょうせつはこのたなです」
「そうそう、それもさっきパラパラめくってみたんだけどね、最近老眼がひどくて小さい文字がつらくなっちゃって。いぬじ君はどんな本が好きなの?」
「ぐりとぐらです」
「あー、聞いたことあるなあ、うちにもあったような」
「あの、だいかつじぼんはどうですか」
「ダイカツジボン?」
「これ、じがおおきいです」
「…?うわ、ほんとだ、こりゃ読みやすいな」
「でもちょっとおねだんがたかいです」
「たしかに、普通の1冊が3分冊だしねえ、…変な事聞くけど、こういうの、図書館にはあるのかな」
「あります」
「えっ、そうなのかい、じゃあ売れないんじゃないのかい」
「なるべくとしょかんにないほんをうってます」
「なるほど」
「はいたつもやってます」
「へえ、それも昔と一緒なんだね。よく子どもの雑誌を届けてもらってたよ」
「かーちゃんもそういってました」
「はは、うちといっしょだね。…ねえ、今店長さんはいる?」
「はいたつにいってます」
「そうか、いつ戻られるかな」
「もうすぐかえってくるとおもいます」
と、ちょうどその時「ただいまー」と店長さんが帰ってきました。
「あ、いらっしゃいませー」
「あの、すいません、突然なんですがちょっとご相談がありまして」
「はあ」

一か月後。
本屋の表にこんなポスターが貼り出されました。
【大活字本のレンタル始めました!】
実は例の男性、現役時代は経営コンサルタントとしてバリバリ働いていた人でした。
レンタルを大活字本に限れば他の書店との軋轢も生まず、これまでの売上に加え、配達地域の高齢者数や図書館利用者数などを細かくリサーチした結果、貸本でやって行っても十分採算が取れるという結論に至ったのです。
その読みは見事に当たり、その上レンタル本の配達が一人暮らしの高齢者の見守りにもなると地域で話題を呼び、なんと大手新聞の地方面に記事が載り、さらにテレビの地方ニュースでも採り上げられたのです。

記事の写真のすみっこにいぬじも写りました。
ニュースはインタビューされましたがしどろもどろだったのでカットされました。
めでたしめでたし。


ところどころノンフィクションが混ざってます。
但し売ってるのは大活字本ではないです。違う種類の本です。
書いてたら久し振りに行きたくなりました。Y書店。
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コメント

たしかに活字離れしてますね。
本を読まない、字を書かない→バカになるって年々実感しています。
もともと少ないのに、この町の本屋さんが2店なくなりました。

私も手塚治虫先生のブラックジャックは大好きで単行本、全巻持ってました。
どんどん部屋が狭くなるので、その昔、大々的な片付けをした時に古本屋さんに出しました。

たれくりたん様

やはりブラックジャックは面白いですよね。
大学の頃手塚作品にどハマりし、図書館も最大限に活用して全作品ほぼ読破しました。
買った単行本はどうしても売れず、今でも二階にどっさり眠ってます。

ほんとに、本屋さんが少なくなりましたよね。
残念、
と言いつつまたAmazonとBOOK OFFで買ってしまう自分。
本屋さんごめんなさい。

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