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職業(その44) 

今晩は飲み会です。
普段家では全くと言っていいほどお酒を飲みませんし、個人で仕事をしているので『職場の飲み会』というものもなく、まともにアルコールを口にするのは1年ぶり以上なのです。
最近よく飲んでいるのはカルピスマンゴーです。
炭酸水で割るとおいしいのです。

さて、今日は土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」の日です。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『俳優』です。

なんといぬじが俳優に。
まあ、どんな役柄かはなんとなく想像がつくと思いますが、
とりあえずいってみましょー。


いぬじが俳優デビューして早3年。
これまで数々のドラマや映画に出演してきました。
ある時は散歩中に死体を発見する犬として、
またある時は主役陣の後ろをさりげなく通る散歩中の犬として、
はたまたある時は雨に濡れそぼっていたところをヒロインに傘を差してもらう捨てられた子犬として(但しヒロインはアパート住まいのため「私もひとりぼっちなんだ」と声をかけられるだけで拾われはせず、そのままCMに入ってその後どうなったかはうやむやのまま)、
とまあ、あちこちで『5秒間の犬』として活躍しています。
ちなみにセリフはまだ一度もありません。
喋ったところでアテレコだと思われてしまうためです。

そんないぬじに、ある日CMの仕事が舞い込みました。
有名メーカーから発売される、新商品のドッグフードのCMです。
残念ながらパッケージの写真になることはできませんでしたが、それでも初めてのCM仕事です。いぬじもいつも以上に張り切って現場入りしました。

スタジオに入ると、そこには、
真っ白な毛を美しく伸ばした大人しいマルチーズと、
スタッフに次々と芸を披露しているトイプードルと、
小さくて丸くて本物のぬいぐるみの様なポメラニアンがいました。
3匹とも、犬専門誌の表紙から飛び出してきたような可愛さと美しさです。

そこへしっぽを振っていぬじが近づくと、そばにいた一人が「ぷっ」と吹き出しました。
「おい、金村、あの犬見てみろよ」
その吹き出した、おそらく広告会社の社員と思われる若い男性が、隣りの同僚に声をかけました。
「何か、一匹だけ違うの混じってね?」
「確かにww なあ土橋、あれ、なんつー犬種だ?」
「柴犬、…じゃねーな」
「タヌキとの雑種じゃね?www」
「あ、それ一番しっくりくるわwww」
いぬじが人間の言葉がわからないと思って好き勝手なことを喋り続けます。
いぬじは犬達との挨拶に集中していたようで、ずっと変わらずしっぽを振り続けていました。

しかし、3匹の犬達は、会話の内容が全てわかっていたのです。
実は彼らも、いぬじと同じく人の言葉が喋れる犬達だったのです。
いぬじと違うのは、それをほとんどの人に隠していた、ということでした。

と、そこへドッグフードを作っている会社、つまりスポンサーのお偉いさんがやってきました。
もちろん、この現場で一番敬われる立場の人です。
「澤野さん、お早うございます!」
金村と土橋が45度のお辞儀をしながら真っ先に挨拶しました、
「ああ、君達か、今日はよろしく」
「「はい!」」
「あの、今日の撮影の段取りはですね」
と、土橋が澤野さんに話しかけると、
「ああ、いいよ、いつも通りだ、信用してるから」
「はい!ありがとうございm」
と90度のお辞儀をしかけた彼から澤野さんはスタスタと離れると、撮影をじっと待っている犬達のそばへやってきました。

「やあ、今日も頼んだよ」
「はい」「おっけー」「まかしてよ」
「…え、えと」
いぬじだけが澤野さんと初対面で、少し緊張してしまいました。
「君は初めてだね。お名前は?」
「ぼく、いぬじです」
「いぬじ君か。僕の想像通りだ」
「え?」
「僕はね、ほんとは雑種が一番好きなんだ。でも商品のパッケージに載るのはいつも純血種だろ?それが不満でね。今回のCMにはどうしても雑種に入ってほしかったんだよ」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ、君のような子が入ってくれて嬉しいよ」
「よかったね、いぬじくん」「さわのさん、やるじゃない」「きょうはきみがせんたーになれば?」
犬達にもやさしく声をかけてもらえて、いぬじはますますしっぽの速度が上がりました。
「でも、やっぱりぼくははしっこでいいです」
「おや、せっかくセンターに推してくれてるよ?」
「ぼく、まんなかだときんちょうしちゃうから」
「そうか、それなら今日も」
「わたしのでばんね」
トイプードルのミルルがクルッと回ってシュッとお座りをして、ニコっと笑いました。

その後、無事撮影も終わり、犬達のオーナーさんが迎えに来た時、
「ちょっとまって」
とミルルが澤野さんに走り寄ってそっと声を掛けました。
「ねえ、こうこくがいしゃのたんとう、かえてもらって」
「アハハ、やっぱり聞いていたんだね」
「わらいごとじゃないわよ、なんなのあのふたり」
「まあ、若いからね、適当にうまくやっとくよ」
「ほんと、おねがいよ」

数日後。
金村と土橋に辞令が出ました。
【下の者 映像制作会社ワンダフルムービーズに出向を命ずる】




本当は金土コンビの会話はいぬじにも聞こえていた、
かどうかはご想像にお任せします。
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