職業(その51) 

今日は3匹連れて久し振りにちょっと遠出してきました。
その模様は明日(か明後日辺り)にご報告するとして、
今日は土曜ですので土曜恒例「いぬじが〇〇だったら」をやります。
職業図鑑の上から順に毎週違う仕事をいぬじにやらせていくという、いわゆる『もしもシリーズ』です。
今日の職業は、『保育士』です。

たまには前振りが短い日があってもいいんじゃないかと思いました。
あっさりしていていいもんですね。
ではいってみましょー。


いぬじが保育士になってもうすぐ2年。
と言っても、人間の子どもではなく、子犬を預かる仕事です。
近い月齢の子犬同士を遊ばせながら、必要な社会化やしつけを一通り行っています。当然のことながら、「愛犬の気持ちをよくわかってくれる犬の先生」と飼い主さんにも評判です。
この保育園は、生後3か月から大体半年までの子犬を預かっています。ちなみにセントバーナードなどの超大型犬は入園した時点でいぬじだけでは抑え切れませんので、人間のスタッフさんにお任せしています。

さて、今いぬじが担当しているのは計6匹。トイプードルが2匹、チワワが1匹、柴犬が1匹、ゴールデンレトリーバーが1匹、中型のミックス犬が1匹です。ゴールデンのモカちゃんはまだ生後3か月なので、他の小型犬たちと一緒に遊ばせています。
この中ではトイプードルの1匹、ココアちゃんが生後半年で一番年長、続いてチワワのケンケン君が生後5か月、ミックスのさくらちゃんともう1匹のプードルのデール君が生後4か月半、柴犬の桃太郎君が生後4か月、という年齢になっています。
みんな仲良しでケンカすることもなく、毎日保育園に来るのを楽しみにしています。
けれど、ココアちゃんがいよいよ来週卒園することになりました。卒園していく子にはお祝いのプレゼントを渡すことになっているので、いぬじはその準備を始めました。

プレゼントはいつも、担当保育士の手作りのおもちゃとおやつです。
いぬじはこれまで20匹以上の卒園をお祝いしてきましたが、今回のココアちゃんの卒園はこれまで以上に感慨深いものがありました。というのも最初の頃、ココアちゃんがなかなか保育園になじめなかったからです。
生後3か月で入園する子は、初日こそ戸惑ってはいるものの、すぐに他の子となじんで仲良くなれます。ココアちゃんもワクチンが終わってすぐに入園してきました。いぬじはすぐ輪に入れるだろうと思っていたのですが、とても怖がりで、飼い主さんが持ってきたキャリーバッグから全然出ようともしなかったのです。結局、初日は一日キャリーの中で過ごしました。

次の日も、その次の日も、ほとんどキャリーの中にいました。おしっことウンチだけは出てきて隅の方で済ませたのですが、終わるや否やキャリーにとんぼ返りです。いぬじは無理に出そうとせず、自分から出られるまで待とうと思いました。
ただ一人ぼっちにしておくのは可愛そうなので、手が空いている時はできるだけそばにいてあげるようにしました。

入園5日目。
今日出てこなかったら、明日明後日は週末でお休みです。そうなるとまた月曜日、きっと出てこられなくなってしまうでしょう。いぬじはさすがに今日は多少強引にでもキャリーから出る時間を増やそうと思っていました。
その日もやっぱりココアちゃんは午前中キャリーの中で過ごしました。いぬじは次にトイレに出て来たら、その間にキャリーをテーブルの上に上げてしまおうと考えていました。
そして、いよいよココアちゃんがおしっこをしたくなる時間が迫って来た時、
先輩犬の1匹がココアちゃんに近づいてきたのです。

その子はヨークシャーテリアのミントちゃん、当時生後7か月でした。
本来なら1か月前に卒園するはずだったのですが、共働きの飼い主さんの仕事が急に忙しくなり、1か月延長になったのです。
「いつもそこにいるね」
ミントちゃんはココアちゃんに話しかけました。
「いぬじせんせいをひとりじめばっかりしてるね」
ミントちゃんは続けてそう言いました。ココアちゃんは怖がって何も言えません。その時いぬじは、うんちを踏んづけてしまったカンタ君の足を拭いていました。
「いつまでかばんにはいってるの」
「せんせい、こまってるのわからないの」
「みんなとあそばないといけないんだよ」
ミントちゃんは次々にココアちゃんに厳しい言葉を投げかけます。
とうとうココアちゃんの目から涙がこぼれ落ちました。
そこへ、ようやく足を拭き終えたいぬじがやってきました。
「みんとちゃんどうしたの」
「ううん、せんせい、なんでもないの」
「でもここあちゃん、ないてるよ」
「めにけがはいったんじゃないの」
「ここあちゃん、かなしいの」
「せんせい、ここあちゃんばっかりかまってずるい」
「みんとちゃん、ごめんね」
いぬじがミントちゃんに謝った、その時です。
「せんせいは、わるく、ない」
ココアちゃんがとても小さな声でそう言いました。
「わたしが、ずっと、ここに、いるから」
消え入りそうな声でそう言うと、また黙ってしまいました。
「もういい、わたしあそんでくる」
ミントちゃんは皆の方へ走っていきました。
「ここあちゃん、ほいくえん、きらいですか」
「…」
「みんなとあそぶの、だめですか」
「…」
「ぼくとあそぶのも、だめですか」
「…びたい」
「なんですか」
「あそびたい」
「ぼくとですか」
「せんせいも、みんなも」
「わかりました」
いぬじは、一番遊ぶのが上手な生後5か月のマルチーズのちーちゃんを連れてきました。
ちーちゃんは、「ほんとはまえからこえかけたかったの」とココアちゃんを誘ってくれました。しばらく2匹で挨拶をすると、ようやくココアちゃんが笑顔になりました。

1週間後。
ココアちゃんはみんなと仲良く遊べるようになっていました。ミントちゃんは無事3日後に卒園が決まり、翌日お別れ会をすることになりました。
「ここあちゃん」
ミントちゃんがココアちゃんを呼び止めました。
「こないだ、ごめんね」
「ううん、わたしのせいだもん」
「ママがね、せんげつからもっとおうちにいてくれるっていってたのに、なしになっちゃったから、ちょっといじわるしちゃったの」
「あしたからはいっぱいいっしょにいられるの」
「うん」
「よかったね」
「ありがとう」
「おわかれだね」
「うん、げんきでね」
「うん、ここあちゃんもね」
いぬじはミントちゃんに、ミントちゃんが大好きなバナナの形をしたおもちゃを贈りました。

話は現在。
ココアちゃんのお別れ会が終わる頃、いぬじはココアちゃんに手作りのおもちゃを渡しました。
それは、ミントちゃんにあげたのとそっくりな、バナナのおもちゃでした。
おやつのクッキーには犬の顔っぽい何かが描かれていましたが、よくわからないのでいぬじに尋ねると、
「ほいくえんのみんなのかおです」
と言われました。
バナナ味でわりと美味しかったです。
おしまい。


今日は(リアルで)4ケ月のボルゾイの子犬ちゃんに会いました。
ふわふわで可愛かったです。おわり。
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コメント

なんか、架空のお話だとわかっているのにウルっときました( ノД`)…
まめよしさんの直木賞モノの文章力の賜物ですね。
きっと、いぬじ先生はくまさんの刺繍のエプロンですね。

ここからリアル話
もう10年以上前に大人ボルゾイに噛まれたことがあります。
半袖の白衣で、二の腕の内側の食べると美味そうな所に犬歯がぶっ刺さり、血が出て中の脂肪が見えました。しかも彼らは顔が長いので、噛む目標物までの到達時間が短いので、逃げる間もなく噛まれました。
というトラウマがあるのでボルゾイが落ちていても絶対に拾わないと思います。

たれくりたん様

ウルっと来ていただいて本当に嬉しいです。
直木賞は到底無理ですが、曲木賞くらいはもらえたらなと思います。
いぬじのエプロンはくまさんと、もう一枚はぱんださんです。

犬同士も結構いじめってありますよね(特に発情期が絡むと)。陰険じゃない分、わかりやすくてまだいいのかもしれないですが、なかなかみんな仲良くというのは難しいものです。
せめて物語の中だけは、という願望も入っております。

咬傷事件、それはさぞ痛かったことでしょう…(T△T) 本当にお気の毒でした…。
私も一度、白いのが見えるレベルで足を噛まれて丸3日血が止まらなかったことがありますが、何が痛いって、その日の夜に噛まれた腕や足全体がものすごい激痛に襲われることですよね。
でも、どうぞご安心ください、
きっと純血ボルゾイは落ちてないです。
ボルゾイっぽい何かの犬は落ちている、かもしれません。
血は薄まっているので、その時はなんとか勇気を出して拾っていただければと思います。

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